第7話 態度の変化
「しかし、君の事情も知らずに強欲な女だと勘違いして…」
気にしなくていいと言っているのに謝ってこようとするエトムント殿下。
真面目な人なのだろう。
ちゃんと謝罪が出来るあたりはどこかの馬鹿王子と大違いです。
「エトムント殿下が知らなかったのは当然です。一週間前にこちらに到着されたばかりなのですから」
だから謝って頂かなくて結構です。
と繋げようとするがエトムント殿下は首を横に振って言葉を遮ってくる。
「知らなかったでは済まされない。知ろうと思えば知る事が出来た情報だ。どうか謝罪を受け取ってくれ」
真面目過ぎる。
クリストフ様すら苦笑いになるくらいだ。
しかし謝罪を受け取らないとずっと申し訳なさそうな表情をされ続けてしまうのだろう。
それは厄介だ。
「謝罪は受け取らせて頂きます。だからもう気にしないでください」
「そうか…。ありがとう」
安心したように微笑むエトムント殿下。
初めて向けられた笑顔に驚き、胸がどきりと跳ねる。
これは他の女性だったら速攻で惚れてしまいそうですわね。
現に周りに座っている女生徒達は頬を赤らめて「ほぅ…」と熱っぽい息を吐いている。
「どうした、変な顔をして」
「いえ。エトムント殿下の笑顔は素敵だなと思いまして」
「な…」
笑いかければエトムント殿下は驚き、そして気不味そうに目を逸らした。髪の隙間から見える耳が赤らんで見えるのは気のせいだろうか。
「いや、その…君の笑顔の方が、ずっと素敵だと思う」
辿々しく紡がれる言葉。
基本的に男性貴族は息を吐くように女性を誉めてくる。そう教育を受けていると知っているので本音だと受け取る事はない。しかしエトムント殿下の場合は違う。女性を褒める事に慣れていないのが丸分かりだ。だから本音だと分かってしまい少しだけ恥ずかしい。
「あ、ありがとうございます…」
たじろぎながらお礼を言う。
なんだか変な空気が流れている気がする。
「その、君の事をリアと呼んでもいいだろうか?」
何故か、愛称を呼ぶ許可を取ってくるエトムント殿下。
不機嫌丸出しの仏頂面はどこに消えたのやら柔軟な接し方をしてくる彼に戸惑う。
他国の王族に愛称を呼ばせて良いのか分からないが下手に機嫌を損ねるような真似は出来ない。
「構いませんよ…」
「そうか、ありがとう」
許可を出すとエトムント殿下は嬉しそうに笑った。
「リア、私の事はエトと呼んでくれ」
流石にそれは不味いと思う。
相手は友好国の王子だ。気軽に愛称を呼べるわけがない。
「流石にそれは良くないと思うぞ」
どうやって断ろうかと困っている私を助けてくれたのはクリストフ様だった。
私の手を強く握ってくる彼は拗ねた表情をしている。
もしかして不機嫌になってる?
「大体、僕だって愛称で呼んでもらえないのに」
悔しそうに言われた台詞に苦笑するしかなかった。
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