第4話 積極的な第一王子

お茶会が終わり、すぐに帰ろうとしたが出来なかった。

会場を後にしたところで待ち伏せしていたクリストフ様に捕まってしまったのだ。


「少しだけ話をしよう」


拒否権を与えてくれなさそうな雰囲気を持つクリストフ様に深く溜め息を吐いた。

不敬罪と分かっていても我慢出来なかったのだ。


「そう嫌そうな顔をするな」

「別に嫌がっていません」


クリストフ様はあの告白以降二人で会うと口調を崩すようになった。

どうやら私の前では素で居たいらしい。

嫌がっていないという答えを聞くなら彼は私の腰に腕を回して「じゃあ、行くぞ」と勝手にエスコートし始める。


「リア、エトムント殿下はどうだった?」

「何が聞きたいのですか?」

「興味を引かれたか?」

「何とも思いませんでしたよ」


エトムント殿下はクリストフ様ばかりと話していましたから。ちらちらと私を見ていた気がしますけど目が合うと顔を背けられていました。

特に思う事はありませんでしたね。


「そうか、良かった」


耳元で囁く声に驚いて彼を見ると嬉しそうな微笑みがこちらを見つめていた。


「リアが他の男に興味を持つのは嫌だからな」

「クリストフ様、近いです…」


物理的に距離を縮めてくるクリストフ様に心臓がうるさくなる。

こんなに積極的な人だと思いませんでした。


「クリスと呼べといつも言ってるだろ」

「王太子殿下を気軽に呼べません…」

「リアには王子とか関係なく一人の男として見てほしいんだ」


熱っぽい声で言われてしまう。

もう既に男性として意識している部分があるのだから今更なのに。

動揺しているとこめかみ辺りにキスを落とされて耐えられなくなった。


「クリス、もういい加減離れてっ…!」


ばっと腕を振り払って距離を取ると悪戯に成功した子供のように笑う彼がいた。


「いつもそうやって接してくれて良いんだぞ」

「無理に決まってるでしょ。自分の立場を考えてよ」

「立場、ねぇ。リアが俺の婚約者になれば対等で居られるだろ」

「大きい声で婚約者とか言わないで…!」


誰かに聞かれたら厄介な事になる。

彼の口を塞ごうと伸ばした手を掴まれて、今度は手首にキスをされてしまう。


「急かすつもりはないが良い返事を期待してるぞ」


この人、断らせる気ないでしょ。

思わず睨み付けるが素知らぬ顔で私のエスコートを再開してくる。


「今日はリアの好きな茶葉を用意させてる。お茶くらい飲んで行け」

「……一杯だけしか付き合いませんからね」


紅茶が飲みかっただけです。他意はありません。



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