第35話 阿婆擦れさんは屑
「なーんだ。アルってば王族じゃなくなるの?」
静まり返る会場の中、能天気な声が響いた。
阿婆擦れさんの事すっかり忘れていましたね。
さっきまでは覚えていたのですけど、頭から抜け落ちていました。
「ろ、ローナ?」
「触らないでくれる?王子じゃないならアルと結婚なんてありえないから」
「な、なんで…!」
「王子様だったからぁ、付き合ってあげてたの!」
急に態度を変えた阿婆擦れさんに動揺するお馬鹿さん。冷たくあしらわれて衝撃を受けているみたいですね。
それにしても王子じゃないから結婚出来ないって
「陛下ぁ、わたし、本当にエミーリアさんにいじめられててぇ。だから、私とクリストフ様の結婚を許してもらえませんかぁ?」
子爵令嬢は体をくねらせて甘えた声を出す。
その姿は阿婆擦れを通り越して屑ですね。
侯爵令嬢である私をさん付け呼ぶ事から間違っています。貴族社会で身分差は絶対ですから。
それと私に苛められているという理由でクリストフ様と結婚出来ると思っているあたり頭がおかしいですね。一度で良いので頭の内部構造を調べさせて欲しいくらいですよ。
「貴様は何を言っておるのだ?」
声をかけられた陛下は怒気が含まれた声を響かせる。
それは元婚約者様を叱り付けた時よりも低いものだった。
「ふぇ…?」
「まず初めにここは学園ではない。子爵令嬢である君が侯爵令嬢であるエミーリア嬢を”さん”付けで呼ぶとは何様だ?」
「あ、あの…」
陛下の魔力はこの国で最も高い。その人が威圧を放ち始めた為、大半が顔を青褪める。
これは魔力量が多くない人には苦しい状況ですね。
「君が苛められていた事実はない。頭の軽そうな女を苛めるほどエミーリア嬢は暇じゃない」
「で、でも、私は…」
「それに君が苛められている事実があったとしてもクリストフとの結婚を認めるわけがないだろう。王族との婚姻は伯爵位以上の家の人間から決める事になっているのだからな」
ふっと陛下の魔力が消える。
周りを確認すると陛下の魔力が当たるのを防ぐ大規模な結界が張られていました。
王妃様が申し訳なさそうに見ていますね。
おそらく結界を作ってくれたのは王妃様です。
今度教えてもらいたい気持ちでいっぱいですが騒ぎが落ち着くまでは無理ですね。
王妃様から視線を外すと阿婆擦れさんと陛下が対峙し続けていました。
「だって、私は幸せになるために生まれてきて…」
「生まれてくる子は皆等しく幸せになるべきだ」
「でも…」
「そういえば君はアルバンに王子だから付き合っていたと戯言を言っていたな。君のせいでアルバンは王族で居られなくなったのだぞ?それを本当に理解しているのか?」
捲し立てるように言われた阿婆擦れさんは言葉を発せなくなる。
それほど強い恐怖に侵されているのでしょう。
「ふざけるのも大概にしろ、この阿婆擦れ」
最後に大きく放たれた言葉。
陛下にここまで言わせるとは阿婆擦れさんはある意味大物ですね。きっと時代が違ったら歴史に名を残す存在となったでしょう。もちろん悪い意味で。
何はともあれ、これで愉快な
そう安心した時、大きな声が響いた。
「そ、それでも、私はクリストフ様が好きなのぉ!結婚するのぉ!」
衝撃的な発言がこだました。
さっきまでアルバン様にくっ付いていたくせに…。
この阿婆擦れはどこまで屑なの?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。