幕間① 初恋※クリストフ視点
俺には小さい頃から好きな子がいる。
その相手は好きになってはいけない子だった。
エミーリア・フォン・ホルヴェーク侯爵令嬢。
俺が好きな相手は弟の婚約者だ。
小さい頃から真面目で努力家で、他人に甘く自分に厳しい女の子。
甘えるのが下手で、甘い物が大好きな幼馴染。
それが俺の好きな相手だ。
リアとの出会いは十年前だ。
弟の婚約者として紹介された侯爵家のご令嬢。
「お初にお目にかかります、クリストフ第一王子殿下。ホルヴェーク侯爵家が長女エミーリアと申します」
幼いながらも緊張を見せずしっかりと挨拶をしてくれたリアには好印象を抱いた。
それと同時に弟の婚約者として縛り付けてしまう事に申し訳なさを抱いた。
弟はお世辞にも優秀な子とは言えなかった。その為、補ってあげられる婚約者が必要だった。
そして魔力量の高さと学習能力の高さで弟の婚約者に選ばれたのがリアだ。
俺が彼女を好きだと自覚したのは出会いから二年後だった。
王城のガゼボで眠っている彼女を見つけた時だ。
厳しい王子妃教育を受けてきたばかりで疲れが出たのだろうリアは小さな体を丸めてぐっすりと眠っていた。
「リア、お疲れさま」
眠る彼女の隣に腰掛け、労るように頬を撫でると嬉しそうに頬を緩める彼女に胸が締め付けられた。
「ん…クリス…?」
瞼が重く押し上げられ姿を現したアメジストの瞳に見つめられた瞬間ドキドキと煩くなり始めた心臓に泣きたくなった。
リアが好きだ。
それが真っ先に思い浮かんだ言葉だった。
「クリス?どうしたの?」
俺が泣きそうな顔をしていたからかリアは心配そうな顔で見上げてくる。その表情すら愛らしく感じた。
「なんでもないよ」
弟の婚約者を好きになるなんて非常識過ぎる。
その後、何度も諦めようとした。でも無理だった。
むしろ彼女と関わりを持てば持つほど、彼女の事を知れば知るほどに気持ちは膨れ上がっていく。
最後は好きを諦める事を諦めた。
だから婚約者を設けるように何度言われても俺は断り続けた。
リアが結婚したら俺も決められた相手と結婚する。
俺の決意は固かった。
三年後、俺は王太子となった。
それを機にリアは俺を「クリス」と呼ばなくなった。
まるで住む世界が違うのだと突き放された気分になり落ち込んだ。
王太子教育を受ける俺と王子妃教育に励むリア。
当然会う時間は減っていった。
王太子になった事でリアとの距離が一気に離されたのだ。
十六歳になった俺は彼女との距離を取り戻せないまま隣国に留学してしまった。
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