第4話 破壊の魔女
月と星が綺麗ですね。今日はよく見えますよ。だって家が半分壊れちゃいましたから。
「ごめんなさい」
家を半分壊してスッキリしたのか地面に頭を擦り付けて謝るお母様に屋敷の使用人全員が苦々しく笑ってます。彼らの職場が半分無くなってしまったのですから当たり前です。
ちなみに使用人達をお母様の破壊魔法から守ったのは私ですよ。とても大変でした。
「壊さないでくださいと言いましたよ」
「つい」
つい、ですか。
それで家を半壊させてしまうあたりお母様はやはり大物ですね。怖いので逆らわないようにしましょう。
「とりあえず、直るまではまた別宅に泊まりましょう」
本邸が壊されましたけど、敷地内には別邸も存在しているので問題ありません。問題だらけですが、問題ないという事にしておきましょう。
場所を別邸に移してから話の続きをします。
「それで馬鹿が噂の阿婆擦れちゃんと結婚したいからリアちゃんとの婚約を破棄すると」
私が話した事と内容が同じなのですが、単語が違い過ぎますね。多くの女性貴族に強い憧れを持たれている素晴らしい淑女が阿婆擦れというのはありなのでしょうか。
「ふざけてるわね~」
お母様、笑顔なのに目が笑ってません。
婚約者様がふざけているのは確かなので否定はしませんけど、その怖い表情はやめてほしいです。
「それでリアちゃんはどうするの?」
「お父様にも言いましたが、婚約破棄をされる前に婚約破棄をして差し上げようかと」
婚約者様は婚約破棄を望んでいるのですから私から破棄しても問題ないですよね。
ただ婚約者がいながら他の方に懸想した件についてはちゃんと精算して頂くつもりですけど。
「あら、それだとつまらないわ」
「もちろん婚約者がいる身でありながら他の女生徒に懸想した件については追求するつもりですよ」
「殴らなくていいの?」
私はお母様と違って物理攻撃上等な性格ではありません。
痛いのは嫌いですし、婚約者様を殴って怪我をするのはもっと嫌です。
それよりもこのままだとお母様が婚約者様に一足早く物理的な制裁を加えそうですね。
個人的には自分でお馬鹿さんの目を覚まさせてあげたいと思っているのでご遠慮して頂きましょう。
「今回の件、お母様は手出し無用です」
「どうして?」
目付きが鋭くなり、真っ直ぐこちらを見ます。
「心配してくださっている事はよく分かっています。ですが、婚約者様については自分の手で制裁を加えたいのです」
絶対に折れる気はないという意思表示として真っ直ぐお母様の目を見つめます。
どのくらいそうしていたか分かりませんが、やがて諦めてくれたようで目を逸らされました。
「分かったわ」
「お母様っ…!」
「ただし、私にも協力させてね」
ワクワクした様子で自身の握り拳を撫でるお母様に頬が引き攣る。
協力は有り難いですけど物理的な協力は遠慮しておきたいですね。
「リア、返事は?」
「は、はい!」
お母様、やっぱり恐ろしい方です。
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