1word 15minutes
フロクロ
お題「ヨーグルト」15分
上下もわからない。見えるのは冷たいコンクリート、高すぎる空、虫の死骸、割れ目に映える雑草……
「おい、もう一発行こうぜ」「殺すなよ~」「死なねえよ」「蹴るぞー」
ボゴオッ
脇腹に一発、蹴りが入った。
「がっ」
「お!効いてんじゃん」「血とか吐かねぇのかな」「吐くまで蹴ればいいじゃん」「天才」
誰が何を話しているのか、頭に入ってこない。感覚をシャットアウトし、一人で考えた。何故こうなった?何故こんなことになっている?何故自分がこんな目に遭わねばならない?
しかしもう答えはわかっていた。
身長だ。
僕は小学生の頃から身長が伸び悩んでいた。しかし中学に慣れば伸びる、と親に言われ期待を膨らまし中学二年。ついに身長は伸びなかった。
147cm。男子の中でもかなり低い。
この身長が目立っているのか、舐められているのか、弱そうと思われているのかはわからないが、とにかくこの身長が今の境遇の原因だと確信した。
悔しい。あいつらを見返してやりたい。というか、思いっきり"見下ろして"、"見下して"やりたい。
僕は腹を決めた。
よし、ヨーグルトに相談だ。
僕は牛乳が苦手だった。あの生臭いにおいと味がどうしても耐えられない。しかし、ヨーグルトならいける。毎朝これを食べれば身長が伸びると、藁にも縋る思いで1パックずつ食べ続けた。
そして一年後の中学3年。
僕の身長は1400メートルに達していた。かなり伸びたな。かなり伸びた。
僕はいじめっ子たちを校舎裏に呼び出した。
「蹴るぞー」
ボゴオッ
音の速さは秒速340m。声が届く前に蹴ってしまった……
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