西へ走る陽 3

 「私たちの模擬試合はどうだったかい、ルヴェンと戦うのは久しぶりだったんだが、上手く立ち回れていたかな。出来れば感想を聞きたいんだが、構わないかい?」


その当人に問われて、三人はあの瞬間に抱いた気持ちを伝えるのに、つい早口になる。


「すごく、すごく感動しましたっ!」

「魔法の使い方も、それを乗せた剣技も・・・見たことがない程に磨かれていて、圧倒されてばかりでした。」

「私たちも、武官様たちのようになりたいと思いました。その後のゼライツ様にも、この学院に大いに頼って欲しいと、背中を押していただきました。」


今にも飛び跳ねそうな勢いの言葉が口を出たことに、三人は自分たちのことながら驚いた。

同時に、アステリオら新聞部に聞かれた時には、上手く言えなかったことを、少しもったいなかったな、と思うのだった。


ジグムントは三人の言葉を聞いて、満足そうに頷いた。

「ははは。それは良かった。君たちは可能性に満ちている。ゼライツの言う通り、この学院を大いに頼って、是非とも素敵な経験をたくさん積んで欲しい。きっと大人になった先も、それが糧となるだろう。

そしてその片隅に、私がいることが出来たなら、実に光栄だ。」


 「その中身・・・模擬試合の時に着られていた鎧ですか。」

 「ああ。見ていた通り、肩当てが見事に外されてしまったよ。明日朝一で修理に出さなくては。

確かに痛んではいたから、近々点検も含めて持って帰ることはコニーに話してはいたんだが・・・壊れてしまった、となるとはね。

コニーに見つかる前に、大きく壊れた部分だけでも直しておこうと思って。」


 取り出された外れた肩当ては、留め具が叩き折られているだけでなく、表面は波打つ程に歪んでおり、炎の魔法の凄まじい威力を受けたことが、ありありと見てとれた。


 「このことは秘密にしておいてくれると助かるよ。コニーに叱られては敵わないんだ。」

 大柄で格好の良いその姿とは正反対の、まるで悪戯を親に隠している、無邪気な子供の様に光るジグムントの瞳に見つめられて、三人は彼の人となりの暖かさを感じていた。

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