橋の上で 5

 欄干に手を掛け、ふとした瞬間に飛び込まんと力を込めているように見えるトールへロキは言う。

 実際はそう上手くいかないことは、この数日の出来事からもよくよくわかっている二人だったが、それでもいつか信じた「甘い理想」を決して捨てたくは無いと感じているのは同じだった。


 「・・・お前に言われると、不思議と本当にそうだと思えてしまうな。皆もロキの話を聞いてみれば、考えは変わるかも知れないのに。」

 トールはため息をついてから、ミミルの川の流れからやっと目を離し、ロキと共に虹の橋ビフレストの先を見据えた。

 「僕には皆みたいに、死後の安寧の世界は持っていないからね。死にたくないから口が上手いだけだよ。」

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