第57話 自責
学校からはまだ何の連絡もなかったようで、早退、それも手ぶらで靴は上履きのまま帰ってきたことに、母はびっくりした様子で、
「何? 何かあった? どうしたの?」
と聞いてきたけど、
「ごめんなさい……」
と目を伏せて謝ると、母はもうそれ以上何も言ってはこなかった。
自室に引っ込んでスマホを見ると、佳奈ちゃんからの着信が四件と、いくつか重ねてメッセージが届いていた。
『大丈夫? 今どこ?』
『宮火さん、意識はしっかりしてるから命に危険はないだろうって、保健の先生が言ってたよ』
『ごめんね。私のせい。本当にごめんなさい』
『返事ちょうだい。心配してます』
『先輩にはまだ何も言ってないけど、どうしようか? 私が説明してもいい?』
はあーっ、と息をついてへたり込む。
よかった。宮火、生きてるんだ。死んじゃなかったんだ。本当によかった……。
緊張がとけて、ふっ、と軽く笑う。
けれどその直後に、宮火を何度も蹴ったことが思い出されて、その強烈な後悔にきつく歯をくいしばる。
もしも佳奈ちゃんが止めてくれなかったら、本当に宮火のことを殺してしまっていたかもしれない。
自分があんなことをしてしまうなんて……、自分で自分のことが恐ろしくて、情けなくて、恨めしかった。
佳奈ちゃんに返事をするのも忘れたまま、何をする気力も湧いてこなくて、お父さんとお母さんに何て説明しようとか、きっとめちゃくちゃ叱られるんだろうなとか、宮火は今どうしてるんだろう、病院で検査受けてるのかなとか、そんなことを考えては何もかも嫌になって、首を振って忘れようとして、でもやっぱり考えてしまって、繰り返しため息をつくことしかできなかった。
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