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結婚式当日。
義叔母様にそれとなく昨日のことを聞こうとは思っていたのだが、起きた瞬間から目まぐるしく準備が始まり、それとなく聞くことは不可能だと、すぐに悟った。朝の挨拶と共に一言、「昨晩は大変でしたね」と言われたっきり、義叔母様も話題に出してこない。
聞くタイミングもないし、準備は忙しいしで、ドレスを着終わってヘアメイクを始める頃にはどうでもよくなってきていた。
容赦なくミルリにコルセットを締め上げられて、それどころではないともいう。なんかもう、式が終わって覚えてれば聞こう、くらいの気分だ。多分忘れてるけど。
「――完成いたしました」
流石、王城のメイドと言うべきか、晴れ舞台パワーと言うべきか。鏡を見れば、普段のあっさり具合からは想像も付かないほど、綺麗にドレスアップされたわたしがいた。
定番の白いウエディングドレスに、胸元に大きな紫の花飾りと、スカートに小さな花のコサージュがちりばめられている。前世と違ってベールはないのだが、髪飾りが十分派手なので、全く見劣りしない。白と紫が美しい、ウエディングドレス。
わたしは、わたし自身のことをあまり美人だと思ったことはないが、極端にブスだと思ったこともない。でも、今日、このときばかりは、なかなかに美人にしてもらえたと、はっきり言える。
普段からこのくらいおめかしするのは疲れるが、今日くらいは楽しみたい。
「似合っているわよ、ロディナさん」
どうですか? と聞く前に、義叔母様が言ってくれる。お世辞でも何でもない、素直な誉め言葉だった。
「ありがとうございます」
義叔母様に今後の流れを少し確認して、義叔母様が退出していくのを見送る。義叔母様も式に出席してくれるそうなので、今度は彼女が軽く準備をして会場に向かわないといけない。
義叔母様自身の準備がほとんど終わってからこちらに来てくれたようだが、ギリギリまで面倒を見てくれて、本当に感謝しかない。
義叔母様が出て行ってしまえば、式まで、本当に時間がない。後は準備を終えたディルミックがこちらに来れば、会場に向かうのみとなる。
婚約パーティー以上の緊張……いや、前世をすべてひっくるめて、今まで生きてきた中で一番緊張しているかもしれない。
まあ、結婚するのも、誰かをこんなにも愛したことも、初めてなので。こんな風に、緊張で死ぬのではと思うほど心臓がばくばくするのも、初めてなのは当たり前と言えば当たり前なのだが。
――と。
扉をノックする音が、耳に届く。大げさなくらい、肩が跳ねた。自分で笑いたくなるくらい。
「準備は出来ただろうか」
ディルミックの声だ。彼の声を聞いた途端、既に、この段階で、感情が一杯一杯になり、泣きそうだった。
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