第15話 お世話係――ここに爆誕!
まさかとは思ったが……やはり一道はそんじょそこらの
「俺の返事を待たずに勝手に任命しないでくんない?」
「同じことよ。だってあなたは断れないから」
俺が歯向かう意思を見せても彼女はまるで動じない。
〝お世話係〟なんてものを請け負えばきっと
悔しいかな彼女の言う通り。
「……具体的にはなにを?」
「炊事、洗濯、掃除……家事全般をお願いしたいわ。〝毎日〟ね」
「毎日ッ⁉」
「ええ。平日は学校に行く前に必ずここに寄ってもらって朝食を、放課後も同じで夕食をお願い。それから洗濯も。掃除は……そうね、木塚君の
おいおい嘘だろ結構ハードじゃね? それ。今の生活にその内容組みこんだらかなり自由時間削られるんだけど。
「俺、あんま家事とか得意じゃないんだが……」
「不安にならなくてもいいわ木塚君。何事にも共通して言えることだけれど、始めなければ上達もなにもないわ。一歩を踏み出し日々精進していけば結果は必ずついてくる。だから、めげないで」
そのセリフを是非、鏡の前に立って言ってもらいたいんですが。
「……ちなみに期限は?」
「未定よ」
きっぱりと口にした一道に俺は思わず溜息を零す。
合わねぇ……どう考えてもこの条件は割に合わねーよ。
「……お世話係についてはわかった。ぶっちゃけ突っぱねたくてしょうがないが引き受けようと思う。ただし、俺からも二つ、条件を追加させてほしい」
「……一応、聞くだけ聞いてあげるわ」
偉そうに足を組み、試すような視線を寄越してくる一道。
そんな彼女に俺は人差し指を立てて追加内容を伝える。
「まず一つ、俺の本性を誰にも口外しないこと。そしてもう一つ、学校では俺に敵意を向けないこと、この二つを吞んでもらいたい」
「前者はわかるわ。後者についてもう少し詳しく」
「……一道は俺のことが嫌いだろ?」
「嫌いよ? それがなにか?」
「それを学校では表に出さないでほしいってわけだ。
「ふ~ん。要は演じろってことね?」
一道からの確認に俺は頷き返す。
「……わかったわ。木塚君の要求を認める」
「本当か?」
「ええ。その程度なら構わないわ」
彼女は立ち上がり足元に散らかった物やらゴミやらを避けて俺の前に。
「お世話係、早速明日からお願いするわ木塚君」
「……つーことはもうお
「そうね、今日はもう帰っていいわ。あ、それと帰ってからでいいから私のLINEを追加しておいて。クラスのグループからできるでしょ?」
「できるけど、なんで?」
「ここに来る前に必ず一報いれてもらいたいからよ」
「あ、なるほどね、了解。んじゃ俺はこれで」
「ええ、また明日」
一道の挨拶もそれなりに、俺はそそくさと去った。
「――空気ってこんなにうまかったんですね」
外に出てすぐ俺はスゥ――ハァとその場で深呼吸をした。
……まぁ俺にもメリットはあるわけだし、明日からそれなりに頑張るとしますか。気持ちの切り替え大事、気持ちの切り替え大事……。
そう心の中で自分に言い聞かせ、俺は帰路につくのであった。
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