第8話師範試験

4年も稽古に励んでようやく師範試験である。


本来は二年ほど前に中伝になって居たので、普通は奥伝であるが一足飛びで師範であった。


試験には小笠原強師匠と札幌の師匠も立ち会った。

結構がちがちに緊張して居たし、札幌の師匠も少し首を傾げていたのに、結果的に合格の決定となった。


合格しても喜んでばかりでは居られない。

会の決まりで自分の教室を持つ義務が有るのだ。


近くの自治会館を週一の夜に借りて広告も出して教室を開いた。

さほど時期もかからずに、6人ばかり集まったので稽古のスタートである。


冬場だったので、集会所を石油ストーブで温めたり、机や座布団を揃えて待って居たものだ。


ところが都合で休む人が居たり、歌謡曲も指導してもらいたいとの要望が出たりで困惑したものだ。


歌謡曲は良かったらカセットにとって来てくれれば、リズムとか音程程度の助言は出来るでしょうと言ったものだ。


私が民謡教室に弟子入りした当時とは、意識や心掛けが全く違う。

それは多少違っても仕方ないとしばらく我慢して続けて居たが、ある時それがプツンと切れた。


それはお弟子さんが一人も来ない日だった。

連絡しても仕事が忙しいとか風邪ひいたとか、急用がが出来たとかで有ったが、普通なら今日はお休みしますの電話位出来ないのか。


今日でこの教室は閉鎖だと決めた時、集会所の庭の桜が満開で有った。

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