第12話角打ちの話

角打ち、と言う言葉を聞いて直ぐわかる人はのんべぇである。私が小学生の頃は酒屋の隣に立ち飲み屋があって、職業不詳の人達が朝から飲んでいた。私は恐れずに中に入って行く。おじさん達が僕を見る。


「カワハギの干しものとのしイカをください」


店主のおばちゃんは子供の来るところじゃないよ、と注意してくれるが結局売ってくれる。カワハギの干しものとはカワハギを乾燥させ、唐辛子をまぶしたものだ。のしいかについては説明の必要も無いだろう。私は美味しいものがそう言ったお店に有るのを熟知していた。酒のおつまみと言うものは子供にとっても良いおやつである。


「角打ち行こう」


悪友をさそって行く。私達にはちょっとした大人の世界に入れる唯一の世界だ。酔っぱらって気の良いおじさんがおごってくれることもあった。昭和の良い時代だ。


先日子供の頃と変わらないその角打ちに行ったことが有る。冷酒を頼み、カワハギの干しものとのしいかを頼んだ。子供の頃と変わらない。立って飲んだせいであろうか、酔って店を後にした。千円も使っていない。あの場所は昭和から変わっていない所なのだ。

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