第2話 旅にでました
師匠はどこに行こうといつも一緒だった。
物心ついた時から師匠に拾われ育てられ鍛えられたのだ。
僕と師匠は血が繋がってはいないが、本当に家族だと思っていた。
それは今も変わらない。
「師匠どこにいても弟子入りしますよー!」
住み慣れた家を近所の婆さんに頼んで僕は師匠を探して出発した。
歩いて森に入り、魔物が戯れてくるが、
今は遊んでいる場合ではないので、軽くあしらう。
森のなかを突き進んでいると、魔物に襲われている女の子がいた。
(師匠がそういえば、魔物に襲われている人がいたら助けなさいっていってたっけ?)
女の子を襲っている魔物に素早く剣で急所をひと突きし、救った。
「ありがとうございます。危ないところでした。それにしてもお強いんですね!」
女の子は、さっきの魔物で驚いたのだろう。
腰が抜けて立てなさそうだった。
だが、いまは、女の子より師匠を探す方が大事だ。
「じゃあ、急いでいるので」
その場を後にしようとまわれ右をする。
ガシッ!
「ちょっ、まっ、こんなか弱い女の子が腰抜かしてるんですよ?動けないんですよ?正気ですか?こんなか弱い乙女を置いていくなんて!」
僕のマントをつかんでうるうる目で訴える女の子。
「え、だって、僕は師匠を探さないと行けないからね?」
マントを掴む女の子の手をマントから離そうとする。
「マジですか?貴方の師匠だって、か弱い乙女をこんな魔物が多い森へおいてけぼりにしたなんて聞いたら悲しみますよ?」
ピタッと動きが止まる。
(師匠が悲しむ?)
アスラは、想像した。
師匠が悲しんで、弟子入りを断る姿を……
「そんなのだめだ!どうすれば、いい?」
女の子の手を握る。
ギョッと女の子が固まるがお構いなしだ。
「どうすれば、師匠が悲しまない?」
「えっと、あのね、普通考えればわからないかな……?」
アスラは、ブンブンと首を横に振る。
「教えてほしい」
「……私を近くの町まで安全につれていけば喜ぶと思うわよ?」
「?」
アスラは、なぜ女の子をつれていけば師匠が喜ぶかがわからなかった。
それもそのはずだ。
アスラの師匠は、戦うことについては教え方も実戦もとても長けていた。
アスラ自身教えると、知識から戦略様々なことを吸収し身に付けていった。
だが、教えていなかったことがあった。
師匠や近所にすむ老夫婦以外との人間としてのコミュニケーションと常識についてだ。
アスラは一生懸命考えているが、わからなかった。
一方女の子は、戸惑っていた。
自分の正体がばれたのかと少し焦っていた。
明らかに目の前の人物の反応が不審すぎる。
だが、この森からはでないと行けない。
なら、誤魔化すしかない。
「えっとね、世間では、か弱い女の子が困っていたら黙って話を聞くものなのよ、それで、自分の力で助けられそうなら助けたあげるの!これは常識なのよ!」
思ったより乱暴な言い方になってしまい冷や汗がでてきた。
「そうなのか!教えてくれてありがとう!」
アスラはブンブンと女の子の腕を握り上下させた。
「なら早速、近くの町まで向かおうか!」
女の子を肩に担ぐ。
「えっ、ちょっ、なんで担いでるの?」
「この方が移動早いんだ!それじゃあ行くよー」
「えっ、ちょ、まっ」
女の子は、担がれながら思った。
(この人、色々おかしい……)
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