#7 似たり寄ったり。

娘ぇ…?娘ねぇ?確かそんなこと言ってたよう


な…


気が…する、ような、しねぇ様な…ねぇ?


てなことを考えてると、まぁたトニーのアホタレ


が来やがった。


ところが、今朝のあいつの様子がどうもおかしい。


いや、こいつァいつもおかしいけどよ。


テレビをつけろ、テレビを見ろとヤケにうるせぇ。


何なんでぇ?


………………は?


え、ちょ、


…え?


ここ、ジョーダンのクラブが有った場所だよな?


なんで黒焦げンなってんの?


ハテナが頭ん中ぐるぐるしてるうちに


気付いたらあの店の前にいた。


テレビで見たのと同じ、辺り一面まっ黒焦げで


昨日まであったもんが全部チリんなってやがっ


た。


ジョーダンを探す為に、デカが良く貼る、あの黄


色いテープをくぐろうとして、警官に止められ


た。


うるせぇ、アイツに会わせやがれ。


アイツぁ…アイツぁなぁ…


俺が警官と取っ組み合いの喧嘩をしてると、


あのパトリック刑事が止めに来た。


「やぁ、刑事さん。」


こいつと俺ァ友達なんだよ、なんつって警官と話


してる俺の手を、パトリックは引っ張って、


「なんでここに来たんですか?」


なんて


抜かしやがるんで


今日、


ここに至る経緯を話した。


「で、なんでこんなんなってんでぇ?」


今度ァ俺が質問する番だ。


曰く、夜の二時過ぎ、ここで爆発音がしたと


通報があったらしい。


警察と、消防が着いた時にゃもうメラメラと辺り


が燃えてたんだと。


何とか火は収まったが、その時にゃもう跡形も



無くなってやがったそうだ。


中から店員らしいまっ黒焦げの死体が次々出てきた。


当然、そん中にゃジョーダンも居た。


昨日まで生きてた「そいつ」が、担架に乗せら


れ、


俺を横切ってった。


だらん、と力無く下がったあいつのまっ黒焦げな


手が、まだ生きてぇと、俺に言ってるみてぇだったよ。


くそ、くそ、クソ、くそ、クソッタレが!


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「隣り、イイ?オジサン。」


胸くそ悪いまま、俺ァBARで飲んでた。


したら、


ネーチャンが1人、


その俺に声をかけてきた。


年の頃ァ、俺の息子と同い年ってとこか。


ま、あいつの今の歳なんざわかんねぇんだけど


な。


…すまん、話がズレたな。


善いも悪いも言い終わる前に、そのネーチャンは


俺の隣へ座った。


俺ァただ、酒を飲んでた。


そのコぁ続けた。


「私も独りなの。小さい頃に両親が離婚。私は父


親に引き取られて、一緒に暮らしてるの。」と。


誰も聞いちゃいねぇよ。ご愁傷さま。


おじさんはそんな優しかないぜ。


「…で、その父親も殺されたの。数日前に。



自分の部屋のバスルームで。


ここまで話せば、わかるわよね?


ケニー・ブロゾンさん。」


…は?


なんでおじさんの名前知ってるのかな?


お嬢さん。


「自分に何かあったら、会いに行きなさい。助け


てくれるから」


と、生前、父が話してくれたの。


私はジェニファー・ガーガン。」


…あの野郎ォ。そんなテキトーなこと言ってやが


ったのか。


「何して欲しいんだ?お嬢さん。」


俺ァ聞いた。


「決まってるでしょ?父を殺した奴を探して欲し


いのよ。」


そらぁ、そうか。


「探して、どうする?見っけたら?」


俺ァ聞いた。


「…殺す。そいつが父にした事と同じくらい…


いや、それ以上に惨たらしいやり方で。」


お嬢ちゃん、ジェニファーのその眼は、数分前に


そこにいた可愛らしい女の子のそれじゃなくなってた。


ふざけるな。


「殺す」なんて若ぇ娘が簡単に使っていいコトバ


じゃねぇ。


「帰れ。」


とだけ、俺ァ、その娘に言って立ち去ろうとし


た。

「やだ!帰らない!私を手伝わないって言うな


ら、この足で警察に駆け込むから!あなたに攫わ


れて、無理やり酒も飲まされた、って。」


…はぁ〜。死んでも面倒事ばっか持ってきやがっ


て、ジョニーの馬鹿野郎!


「好きにしな。」


荷物が、ひとつ増えちまった。

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