#5 筋肉バカはこれだからまったく…

はいはいはい、来ちまったよ来ちまったよ来ちま


ったよ。


なんなんだ、このシャーシャーうるせぇのァ!


こう暗くちゃなんも見えんだろうが!


どけ!どけっての!ガキ共!


ンなとこでイチャつくな!


気持ち悪ィ。


俺とトニーは、ジョーダン…えーっと、


そう。ジョーダン・クランブル。って奴に会いに


奴がよく来てるクラブに足を運んだ。


足だけだ、来たくて来たんじゃねぇや、


こんなトコ。


くぉら!こんなとこで商売しようとすんじゃねぇ、


アホたれトニー!


俺ァ奴の首根っこ掴んで引き摺ってった。


さっさとジョーダン・クランブルに会って、


ジョニーについて話聞いて、こんなトコ


さっさとおサラバすんぞ。


俺ァ、トニーの足の先を付いてった。


ついてったら、奥になんともまぁ


「ソレっぽい」トビラがあるのさ。


重そうな、カネだけベラボーにかかってそうな。


んで、まぁわかるだろ?


「クッキョウな」男が二人


左右並んで立ってたんだ。


デーンて具合に。


で、「ID」なんてブアイソに言うもんだから、


聞き返してやった。

「あァ?」ってな。


知るわけねぇだろ、この俺が。


トニーが俺を宥めて、その野郎2匹に


何桁かの番号を耳打ちした。


俺ァ聞こえねぇし聞きたくもねぇから


聞いてねぇ。


でもって、その2匹がでっけぇトビラを


どっこいしょと開けた。


やぁっと入れた奥にゃ、


計4つのたわわに実った


「禁断の果実」と、その真ん中に


ムサっ苦しいジャガイモが


ドカッと座ってらした。


トニーがそのジャガイモの


指輪にキスして、ここに至る経緯を


(このバカなりに)


事細かに


ジョーダンに話した。


俺ァ頃合を見計らって口を挟んだ。


「ってなわけなんで、ご存知ありゃあせんかねぇ、クランブルさァん。」


俺なりに下手に出たつもりだ。俺なりに、な。


俺の言葉の何かがマズかったらしい。


トニーのツラが青ざめてくのがわかった。


あのトニーがビビるか。


ちょいと遊んでみたくなった。


どうしたんですかい、クランブルさァん。


すると、奴ァいきなり、フルーツやら


豪華な食いもんがどっさり並べられた


でっけぇテーブルをダーーーンと、


ひっくり返しやがった。


聞けば、


「俺を「クランブルさん」なんて呼ぶんじゃねぇ!」


などと叫んでやがった。


何だ、そりゃ?


おめェの名前だろうが。


周りにいた連中が、ジョーダンを止めようとする


中トニーのやつが俺の首根っこ引っ掴んで

ダッシュでその場を去った。ダァーーーって。


…え?俺なんか悪ぃ事言った?


あんまりの事に呆気に取られてると、


トニーが話してくれた。


クランブルの両親は、あいつがまだ目も開いてね


ぇ赤ん坊の時分に交通事故で死んだらしい。


そんでもって、アイツは、アイツの親戚に引き取


られることになったんだそうだが、


それがマズかったと、トニーは続けた。


アイツを引き取ったクランブル家は、


というか、そこの夫婦は


アイツ自身に興味なんかなくて、アイツの両親が


遺した遺産が目当てだったらしい。


夫婦は、アイツに、親がガキに教えちゃなんねぇ事ばっか教えた。


算数の代わりになるからと、麻薬の売買をやらせたり、


ちぃっとデカくなると、性教育だっつって、売春



させた。


だから、アイツの中じゃ「クランブル」って名前


は「呪い」と同じなんだ。と、


だから、周りにゃ「J」としか呼ばせてねぇんだと。


……ふーーーーん。タバコ代にもなりゃしねぇ話だな、まったく。


まぁ、いいや。明日もっぺんアイツんトコ行くぞ。

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