ウィズの魔道具屋さん(アダルトショップ)

こば天

ウィズの魔道具屋さん(アダルトショップ)

アクセルの街にある、一軒のお店。


店内には数人の客の姿があるが、誰も商品を手に取ろうとはせず、店の中をなんとなくうろうろしては、店員の姿をチラッと見ただけで出ていってしまう。


ここは、ウィズの魔道具屋。街で噂の、美人店員のいる店として知られてはいるが、なんにも使い道がないアイテムしか置いていないので、街の住人はアイテムを買いに来るのではなく、目の保養のために来ているだけ、であった。


優しそうな笑顔に、豊満な胸元。見ているだけで癒される立ち姿。見た目だけなら完璧なのだが、商才が全くないポンコツ店主ことウィズは、客がいなくなってしまった店内で、一人ため息をついた。


「はぁ・・・。お客様はちらほらと来てくれているのに、商品が全く売れません。なぜでしょうか。」


「当たり前だろう、そんなこともわからないのか?このポンコツ店主よ!」


店の奥から、バニルがウィズに指を突きつけながら現れた。


「今、商品として届いたアイテムを見てみたのだが、なんなのだあれは?あのアイテムを買い付けた理由を聞こうではないか!」


「あ、届いたのですね!えーと、これは・・・。飲むだけで剣が素早く振れるようになる薬!これは売れますよ!」


「剣を1度振ったら、腕や肩に後遺症が出る場合があります、と小さい文字で書かれているが?」


「え?あ、ほんとだ・・。つ、次は大丈夫です!どんな攻撃呪文も跳ね返す腕輪!これはどうです?」


「たしかに効果は期待できそうだ。だがこの腕輪、呪いを受けているな。つけたら2秒で精神を病む。攻撃呪文を受けるよりも先に廃人になるが?」


「あれ~?えと、これはどうでしょう。履くだけで躍りがうまくなる靴です!」


「履いたが最後、死ぬまで躍り続ける。もはや童話の世界だな、ポンコツ店主よ」


「うぅ・・・すいません・・・」


このように、ウィズの店に置いてあるアイテムは、どれもガラクタ同然であった。売れるはずが、ない。


「今月も赤字決定だ。先月も、先々月も赤字。来月も赤字であろうな・・」


悲しげな目をし、うなだれるウィズ。だが、バニルは容赦がなかった。


バニルの説教が続くなか、カズマが店に訪れた。


「うぃーっす。バニルいるかぁ~?」


「これはこれは。姑息な生活にたけた小僧よ。待っておったぞ」


「カズマさん、いらっしゃいませ。バニルさんにご用ですか?」


「ポンコツ店主よ、我輩はこの小僧から話を聞いて、アイディアグッズを商品化せねばならない。店の奥を借りるぞ。」


「はい、ご自由に。今、お茶をいれますね。」


バニルとカズマは、店の奥にある部屋で話し合いを始めた。


「さて。この前聞いた、ライターやコタツ、などの小僧の知る知識は大変に興味深い。他に商品になりそうな話はないか?ポンコツ店主が経営するこの店は、今月も赤字が決定しているのだ。今すぐにでも、目玉となるアイテムが欲しい」


「俺のアイディアで作ったアイテムが売れたら、こっちにも金を回してくれるんだよな?」


「うむ。約束しよう」


「いいか?俺がいた日本という国では、TE○GAというものがあってだな。」


「天牙!なんとも力強い響きだな。強力な攻撃が放てるアイテムか!」


「いや、なんていうか・・・。癒しのアイテムってやつかな?」


「回復アイテム、のようなものか?」


「ん~まぁ・・。男性限定で回復するというか、使うと気持ちのいいアイテムだ。ぜひ作って欲しい!ぜひ使いたい!久しぶりに!」


カズマはバニルに、T○NGAがいかに素晴らしいかを情熱的に語った。冒険で疲れた心と体をリフレッシュできる、素晴らしい癒しアイテムとして、ぜひ商品化して欲しい、と。


カズマは、金儲けなど頭になかった。バニルを騙し、なんとかTE○GAを作らせて、使用したい。あの快感をもう一度。


「ふむ。面白い。それを商品化したら、さぞや売れるだろう。むくつけき冒険者どもが目を血走らせて店にやって来るであろうな。」


「だろう?俺は、傷ついた冒険者の心と体を癒してほしい、その一心でだな!」


「カズマさん、話は聞かせていただきましたよ。」


「ウ、ウィズ?どうしたんだ?恐い顔して。」


「どうしたもこうしたもありません!そんな商品、お店に置けるわけないじゃないですか!大きな声で変な話をしないでください!丸聞こえです!」


「ええええええ!聞こえてたの?やだ、恥ずかしいな///」


「とにかく、却下です!そんな物はうちで扱う気はありませんからね!」


「バニル!店で売らなくていいから、商品化してくれ!一個でいいから作って!洗って使うからぁぁぁ!」


カズマは、泣きながらバニルに詰め寄った。この生殺しな生活に快感を。


カズマは、店から叩き出された。


カズマの願いは、叶うことはなかった。


「もう、カズマさんたら。お店で変な話をして。とうぶんは出入り禁止です。」


「ま、いいではないか。若い証拠だ。」


「バニルさん、カズマさんが話していた物、使ってみたいとか思いましたか?」


「なんだポンコツ店主よ、顔を赤らめて。盗み聞きをしておいてなにをいまさら恥ずかしがる」


「盗み聞きなんかしていません!カズマさんが大声で話をしていたから、こっちにまで聞こえてきたんです~!」


顔を真っ赤にし、大声を張り上げるウィズ。


バニルは、人をからかい騙した時に発する怒りや羞恥などの悪感情を好む。人ではないウィズにそれが当てはまるかは謎だが、ウィズをからかって楽しんでいるのは明白だった。




ウィズが経営している魔道具屋は、いつも赤字だった。ウィズには商才がなく、店主としてはポンコツだ。


だが、そんないつ潰れてもおかしくない店が、今や1日に最低でも300人は客が来るほどに成長していた。


ウィズの経営する魔道具屋。


今や魔道具屋とは名ばかりの、カズマのいた世界、日本でいうところの「アダルトショップ」と化していた。


一度はウィズからT○NGAを却下されたカズマだったが、それで簡単に諦めるカズマさんではなかった。


秘密裏にバニルと話し合いをし、T○NGAを商品化。


ウィズのいない隙を狙って販売をし、口コミなどで噂は広まり・・。


これが空前の大ヒット!!!


店主のウィズは最初は激怒していたのだが、店の売り上げをみて、怒るに怒れず、今に至る。


毎月赤字を量産していた店とは思えないような盛況ぶりで、T○NGAだけではなく、豊富な種類のアダ○トグッズで巨額の富を得ているのであった。


「い、いらっしゃいませぇ~」


「こ、これください。ハァハァ」


「あ、ありがとうございます。またおこしくださいませ~」


ウィズは疲れはてていた。店のなかにはカズマが商品化したよくわからない物が並び、室内もなんだか薄暗く、なんとなくピンク色の照明がつき、ウィズ自身もなんだか露出の多い衣装を着せられて働かされていた。


ウィズが着させられている衣装はサキュバスのお姉さんが着ているものとまったく同じ物で、ウィズの豊満な胸元は少し動いただけでこぼれ落ちそうになり、それを目当てに来る客が後をたたない。


もちろん、この衣装も『セクシーランジェリー』として販売している。


この店はウィズが経営者なのだが、赤字経営だったお店を立て直したカズマには逆らえず、しぶしぶ従っている状態だ。


「フハハハハハハ!TE○GAの追加、持ってきたぞ!品出しは我輩にまかせておけ!」


「バニルさん、いつもありがとうございます。なんだか・・毎日忙しくなってしまいましたね・・・」


「いいではないか!なんのやくにもたたないガラクタを置いておいて赤字を垂れ流すしかなかった店が、今やこの繁盛ぶり!もう、ポンコツ店主とは呼べぬな!」


「わたしの力ではないですけどね、残念ながら・・・」


「あのぉ、ハァハァ。こ、これ、どう使えばいいです?よかったら、ハァハァ、お姉さんが使ってるとこを、ハァハァ、み、見せていただければぁ、グフフ」


「あ、いらっしゃいませ。これですか?これは、ここを押して、と。」


ウィズは、客が持ってきたピンク色の商品の使い方を説明しはじめた。ウィズが商品のボタンを押すと、ピンク色の商品は小刻みに振動し始めた。いわゆる、ピ○クローターである。


「こちらは、肩などにあてて疲れをとる、マジックアイテムになります」


「お姉さんは、こ、これ、使ったことあり、ますか?ハァハァ」


「ありますよ。わたし、肩こりがひどくて。これを毎日使っています」


「ま、毎日・・。き、気持ちいい、ですか?」


「はい、とっても気持ちいいですよ!」


「買ったぁぁぁあああああ!!!!」


「俺も、俺も買うぞ!」


「俺もだ!ふたつ・・・、いや、みっつくれ!!」


美人店主の説明に興奮したたくさんの客が、ピ○クローターを持って殺到してきた。みな、目を血走らせ、鼻息が荒かった。


魔道具屋なのに、冒険者の姿はひとつもなかった。みな、こぶとりでネルシャツでメガネで小走りだった。


「ウィズ、すまない。遅れてしまった。」


「ダクネスさん。いつもすいません、手伝っていただいて。」


ダクネスは、ウィズの店の手伝いを自分からかってでたのだった。ちなみにダクネスの格好は、露出高めの、いわゆるビキニアーマーだった。


「あぁ、なんて素晴らしいんだ。毎日毎日、男どものいやらしい視線にさらされ、商品を渡すときにはオークのように醜い客の、汗まみれの汚い手に触れねばならないという恥辱・・・。ここは天職だ!いらっしゃいませぇぇぇぇえ!」


「ダクネスさん、お客様に醜い、とか言っちゃダメですよ~?」


「わかっている。わたしは大丈夫だ!わたしは、アンデッドなみの異臭を撒き散らすこいつら相手でも、一歩もひくきはない!いらっしゃいまぇぇぇぇ!」


セクハラ的なことをしても嫌がらない、癒し系美人巨乳のウィズと、露骨にいやがるし、時には罵倒しては悶えている巨乳のビキニアーマーのダクネス。この2枚看板は、どんな客層にも対応できる最強の布陣だった。


ちなみに、バニルによる商品の陳列、TE○GAタワーも人気を博していた。


朝から大盛況だった魔道具店も、昼過ぎになり少し落ち着きを見せ始めた。


そこに、めぐみんがやってきた。


「なんだか、大盛況ですね。ダクネスが働いていると聞いて見に来ました」


「めぐみんも着てみるか?なかなかに刺激的だぞ!」


鼻息荒くセクシーランジェリーを差し出すダクネスを、めぐみんは聞こえないふりをして無視を決め込み、店内を物色し始める。


「なにやら、見たことがない商品ばかりですね」


「そちらの商品のほぼすべてが、ひょいざぶろーさんによる物なんですよ!」


自分の父親が『アダルトグッズ』職人に成り下がっていることを、娘はまだ知らない。


「これ、カッコいいですね!デザインが、私の心をくすぐります!」


目を輝かせ、めぐみんが手に取ったものは。


SMに使う首輪「トーンラレックス」。


革張りで、銀の鋲がたくさん付いた派手なデザイン。コンセプトは『これであなたも犬以下に』である。


SMグッズを手にして目を輝かせるロリっ子を見て、店内にいた数名の客たちは鼻息が荒くなり、店内の室温がぐっっっと上がった。


「このかっこいい首飾りと、この手錠?なる物をください!これは良いものです!」


「お買い上げありがとうございます、めぐみんさん。また、いらしてください」


デザインだけで選んだSMグッズを手にホクホク顔で店をあとにするめぐみん。それを笑顔で見送るウィズ。


ウィズにはアダルトグッズの知識は皆無だった。よく分からない物をよく分からずに売らされている・・・。


めぐみんが店内から出た瞬間、客たちは一斉にSMグッズコーナーに殺到し、我先にとグッズを奪い合う。


ロリな魔女っ子と同じものを手にしようと、客は必死だった。


なぜかその中に目を血走らせてSMグッズを手にしようとする、ゆんゆんの姿があった・・・。


人気が出れば出るほどにウィズとダクネスの着る衣装の露出がふえ、目に余るような卑猥なアダルトグッズが増えていき、ついには王都から業務停止命令がくだされたのだった・・・。


「いらっしゃいませ~。」


ウィズは、今日も笑顔で店に立っていた。

しかし、いつものローブ姿ではなく、露出度の高い服を着ていた。胸元が不自然に開いていて、スカートたけの短い、いわゆるボディコン。


もちろん、ウィズの意思で着ているわけもなく、強制的に着せられているのだった。


店内もいつもと違い薄暗く、ピンク色の間接照明が灯されていて、怪しげな空気を漂わせていた。


「さて、今日も勤労に励むとするか。」


「おはようございます、バニルさん」


「ポンコツ店主よ。よくもそのような恥知らずな格好ができるな。貴様には羞恥心がないのか?」


「す、好きでこんな格好をしてるわけじゃありません!」


ウィズは顔を赤らめ、短いスカートたけを伸ばし、胸元を隠しながらバニルに詰め寄った。どんなに頑張ろうと、ウィズの豊満な胸元が隠れることはなかった。


「フハハハハ!まぁ、貴様のその恥さらしな格好も、売り上げに貢献しているのだからよいではないか!さて、我輩は商品の補充をしなければならぬのでな!」


バニルはいつものようにウィズをからかい、商品の補充を始めた。


一度の業務停止命令くらいで辞めるはずもなく。


ほとぼりが覚める頃を見計らい、バニルはまたしてもアダルトショップとして、表向きは『あくまで』魔道具屋として営業を再開していた。


冒険者など一人も来ず、来るのはいちゃついたカップルか小汚ないおっさんのみ。


ウィズはため息をついた。


カズマの口車に乗せられ、あれよあれよと言うまに店内を変えられ、文句を言おうとしたのだが売り上げは瞬く間に右肩上がり。なにも言えなくなったウィズは、今やカズマの言いなりで・・・。


「あ、あの・・・ち、ちょっと聞きたいのだが」


「はい、いらっしゃいませ。なにかご用ですか?」


「こ、こちらの、箱の中にある、け、景品についてkwsk。ハァハァ」


小太りで眼鏡をかけ、チェックのシャツに頭にはバンダナ。両手に指ぬきグローブをはめた客が、カウンターの上に置かれた箱(ガチャポン)を指差した。このガチャポンも、カズマの発案だ。


「こちらの箱の中には、アタリとハズレがありまして・・・。ハズレはマジックアイテムで、アタリは・・・その・・とある盗賊の少女と、アークウィザードの少女の・・パ、パンツ・・・です・・」


「え?聞こえないを?ちゃんと言ってくれないと困るを!ハァハァ」


「で、ですから・・パ、パンツ・・・」


「俺、やるぞ!」


「ここに硬貨を入れればいいんだな!」


男どもが、ガチャポンに殺到した。ものの数分でガチャポンの中身がカラになった。

ちなみに、ガチャポンのハズレは全て店の売れ残りであるマジックアイテム(ガラクタ)で、アタリはカズマがスティールによって得たクリス(白)とめぐみん(黒)のパンツだった・・。



「おはよう、ウィズ。今日もよろしく頼む。」


「おはようございます、ダクネスさん。あの・・・今日も・・やるんですか?」


「無論だ。仕事だからな!」


ダクネスは、毎日のように従業員として店に来ていた。


「あの・・無理はしないで下さいね?」


「心配はいらない。ここは、わたしの天職だからな!」


ダクネスの目が血走り、口許からキラリと光るヨダレが垂れた。



「さぁさぁ、客どもよ!今宵も宴が始まるぞ!」


バニルの声かけに、店の客たちのボルテージが上がりに上がりまくっていた。


ここは、店の奥。秘密裏に作られた部屋。


部屋の真ん中には鋼鉄の檻が置いてあり、鼻息の荒い客が檻の回りをぐるっと囲む形で30人ほどいた。


ここで夜な夜な行われているショー。


それは。


「では、始めようではないか!レッツショータイム!」


バニルが指をならした。それを合図に、ウィズは転移魔法を発動した。


ウィズの転移魔法によって檻の中に現れのは、ビキニアーマー姿のダクネス。なぜか、ロープで後ろ手に縛られていた。


ダクネスと共に檻の中に現れのは植物型モンスター、蔓たんとん。蔓たんとんは、容赦なくダクネスに絡み付いた。


「くっ!両手が使えなくとも、わたしは、わたしはぁぁぁああ!」


ダクネスは必死に抵抗した。蔓たんとんの粘液まみれの触手から逃れようともがけばもがくほど触手は食い込み、粘液まみれになっていく。


ダクネスのあられもない姿に、客のボルテージはさらに上がった。


ビキニアーマーの隙間から入り込む、蔓たんとんの触手。


「あぁっ!そんなところまで!くっ!なんてご褒美だ!悪くないっ!」


恍惚の表情を浮かべ、悶えるダクネス。


客たちは魔道カメラを使って、ダクネスの姿を撮っていく。ちなみに、この魔道カメラは店のレンタルで、カメラのレンタル料もしっかり取り、撮った写真も高額で販売している。ショーの入場料もなかなかに高額で、店の1日の売り上げは凄まじいことになっていた。


ちなみに、ダクネスは無給で働いていた。むしろ金を払う!払わせてくりぇ!と言い出し土下座をしはじめた時は、こいついよいよだな、と、全員が引いた。


アダルトグッズに、深夜のショータイム。


ウィズの魔道具屋(名ばかり)は右肩上がりで売り上げを伸ばし、グッズは卑猥さを増し、ショーは過激さを増し、ウィズの衣装の露出(主に胸元)も増していった。


もちろん、すぐに王都から業務停止命令がくだったのは言うまでもない。


ショーのために作った部屋と鋼鉄の檻、売れ残りのアダルトグッズ、ショーで使うために集めたモンスターの代金、これらは全てカズマの借金になった。


おしまい。
































































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