第肆拾玖話 公爵家にて(後編)

 レオンさんの話を聞いた、公爵家の方たちは驚いている。


「本当か。王都では、これが平民でも食べられるのか。」


「あなた。そんなことより、このプリンを作ったのが、アオイちゃんっていう方が重要よ。」


「そうなのか。」


「父上、母上の仰る通りです。重要なのは、アオイが作ったことです。」

「父上は、平民でも食べられると言われましたが、もしかしたら富裕層区域の者は、一般区域まで行き、食べたことがある者もいるかもしれませんが、貴族達は、一般区域には行きませんから貴族達は、口にしてません。」

「噂くらいは、広まっているかもしれませんが、わざわざ一般区域に行くことはないでしょうからね。テイクアウトができる店が出来れば、使用人命令するかもしれませんけどね。」


「確かにな。」


「そして、私がアオイが作ったことが重要と言っているのは、貴族が食べたことがない物を平民が店に行けば誰でも食べられるのです。

愚かな貴族が使用人を使い、店に、そしてアオイに手を出す可能性があるのです。

アオイには、魔法のこともありますからね。愚かな貴族は、調べさせてアオイを自分のものにようとする輩がいるかもしれません。富裕層区域にもそういう輩がいるでしょう。」


 確かに、貴族や大商人なら調べるのは簡単だろうなと私は思った。

 ダニエルさんやレガールで働く皆にも迷惑が……


「父上、そこで提案なのですが、アオイを公爵家の養子にし、一般区域の店の支店を貴族区域に出させるというのは、一般区域の店の方にも公爵家が後ろ楯になれば貴族や富裕層の抑止力になると思うのですが、どうでしょうか。」


「!!」


 レオンさん、いきなり何言っているんですか。

 私が公爵家の養子に……でもレガールの皆に迷惑がかけないようにするには、その方がいいのかも……


「そうだな。公爵家としては問題ない。魔法のこともあるし、他にも我らが知らぬ料理の知識などがあるだろうし、公爵家としては大歓迎だ。だが、アオイの気持ちも大切だ。

どうなのだ。アオイは、ヴァスカトール公爵家の養子になる気はあるのか。」


 私の気持ちを尊重してくれる公爵様いい人だな。初めてあった私なんかのことを思ってくれるなんてさ。

 自分や皆の安全を考えれば、それが一番安心できる選択だよな……


「はい。自分や皆のことを考えれば、それが一番だと思うので、私なんかで、よければよろしくお願いします。」


「わかった。歓迎しよう。ところで、誰の養子にするのだ。言い出したレオンか。」


「いいえ。父上の養子でお願いします。」


「そうね。うちは、男の子しかいないから私は、娘が欲しかったのよ。アオイちゃんかわいいし、レオンの意見に賛成よ。」


「私もレオン兄さんに賛成です。」


「私もレオン兄さんに賛成。私は、末っ子なので、妹ができるのは嬉しいです。」


 皆、娘や妹が欲しいのか。男ばかりの兄弟だとそういう気持ちになるのかな。よくわからないけど


「わかった。私の養子としよう。」


 こうして、私は、ヴァスカトール公爵家の養子になった。

 初めて公爵家に来て、そのまま養子とか私、結構、流れに任せているな。


 そして、お父様、お母様、レオンお兄様、ノリスお兄様、カールお兄様と呼んでみたら皆、嬉しそうにしていた。

 あと、レオンお兄様から普段は、レオン兄さんと呼んで欲しいと言われた。

 貴族ということを隠してはいないが、広める気はないからお兄様だと変だからとのことだった。


 公爵家の皆は、泊まっていって欲しかったみたいだけど、当初の予定は、レオン兄さんの荷物を取りに来ただけなので、私とレオン兄さんは、王都に戻ると伝えたら寂しそうな顔をしていたので、また来ることと、よかったらそのうちに王都に遊びに来てはと提案したら笑顔に戻った。

 私がまた来ると言った時にレオン兄さんは、ちょっと嫌そうな顔をしていたけど気にしないことにした。

 きっと、公爵家を継げと皆から言われるのが嫌なんだろうな。


 王都に戻ろうと思ったのだが、私は全属性だから、もしかしたら転移魔法使えるのではないかと思い、ステータスをチェックしたら、やっぱり転移魔法の文字があった。


 なので、レオン兄さんに提案した。


「レオン兄さん、もしかしたらと思って、ステータス確認したら私、転移魔法使えるみたいなので、ゲートではなく、転移魔法で王都に戻りますか。結界があるから王都内には、転移できないので、王都の門の前に転移することなりますけど……」


「「「「「!!」」」」」


 それを聞いた皆は、驚いていた。それはそうか。転移魔法は、世界に五人しか使える者がいないみたいだし、私が六人目になるのだから


「そうか。全属性だから収納も使えるし、空間魔法も使えるんだよな。」


「店の支店の話を王都の屋敷の使用人に話さないとならないが、俺だけで行くか、使用人たちをクランハウスに呼べば済むしな。

 養子縁組が承認されて、公表するまでは、アオイは貴族区域になるべく近づかない方がいいからな。

 使えるなら転移魔法で戻ろう。転移魔法だと入口で受付が必要だが、ゲートの場合でもゲートの使用手続きとか必要だからどちらも大してかわらないからな。」

「早速、帰るか。抱っこしてやる。」


 転移魔法で一緒に転移するには、体に触れていなければならないので、ここぞとばかりにレオン兄さんは、私を抱っこした。

 公爵家の皆も羨ましそうな顔をしている。

 公爵家に来たときも私は、レオン兄さんに抱っこされていたけど、養子縁組の書類は書いたが、まだ提出し、承認が済んでないので正式に養子になったわけではないが、家族になるので、初対面の時とは気持ちが違うのかもしれないなと私は思った。


「はい。では行きますよ。転移。」



 こうして、私とレオン兄さんは私の転移魔法で王都に戻り、入口で門番にギルドカードを見せ、王都内に入り、クランハウスになった屋敷に帰って来た。

 色々話したり、養子縁組の書類を書いたりして、予定より遅くなったので、クランメンバー皆、戻ってきていた。

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