第肆拾捌話 公爵家にて(前編)
私は、レオンさんと一緒に、ヴァスカトール公爵家の屋敷に行くことになり、
「レオンさん、一人で歩けるので、下ろしてくれませんか。」
「ダメだ。これから貴族区域に行くのだからな、変な貴族に目をつけられると危ないからな。」
「なら、せめて手を繋いで一緒に歩くのは、どうでしょうか」
「おお、それもいいな。だが今は急いでいるからダメだ。」
レオンさんに抱っこされながら、貴族区域に向かうために街中を進んで行くのが、貴族区域に行くまでに知り合いに出会す可能性もあるので、恥ずかしいから、せめて手を繋いで歩くくらいにしてほしかったのだが、却下された。
「ここが
貴族区域は、一般区域と違い当たり前だが、立派で広い庭がある大きな屋敷ばかりだった。
そして、
「そうだ。アオイは、ゲートでの移動は、はじめてだろう。」
「はい。はじめてです。王都にくるのにヒューイットさんの転移魔法は体験しましたけどね。」
「そうか。」
そして、受け付けに行き、手続きをして、レオンさんが使用料を払い、レオンさんと
そして、門をくぐり、ヴァスカトール公爵家の屋敷に向かった。
「レオン様、お帰りなさいませ。旦那様やご家族にお会いされますか。」
公爵家に着くと執事さんらしき人がレオンさんに挨拶をした。
「いいや。荷物を取りに来ただけだから、気にしなくていい。」
「ところで、抱えられているお子さんは……旦那様を呼んで参ります。」
執事さんが、私を見て、慌てた様子で屋敷に戻っていった。
「どうやらスティーブのやつ、アオイを俺の子供だと勘違いしたようだな。」
そう言いながらレオンさんは、屋敷の中に入っていく。
「レオン、戻ったか。スティーブから聞いたぞ。子供を連れてきたらしいな。」
「父上、違います。それに何で家族全員来ているのだ」
家族勢揃いしたらしい。
「では、レオンが抱えられている子供は何なのだ。」
「アオイは、同じクランのメンバーで、私と同じ冒険者です。」
レオンさんの話し方が貴族っぽくなっている。まあ貴族なのだから当たり前か。
「こんな、小さいのに冒険者なのか。」
「アオイは、小さいが凄いのです。魔法の才能は、ご先祖様に匹敵くらいの数値なのです。」
「「「「「!!」」」」」
レオンさんは、私のことを簡単に説明した。
私の魔力のこととか話さなくてもいい気がすけど……皆、驚いているし……
「詳しく話を聞きたい。座って話をしよう。」
ほら、詳しく説明しなくちゃいけなくなっちゃったじゃん。
レオンさんも面倒臭そうな顔をしているけど、そうなったのはレオンさんの所為だよ。
私たちは、部屋に案内され、ソファーに座るように言われた。
そして、レオンさんは、私に家族の紹介をしたあと、レオンさんが知っている範囲で、私のことを説明した。
緊張からか小腹が空いてきた。
手土産用にプリンを無限収納に入れて持ってきているから出して、皆で食べよう。
「レオンさん、お土産持ってきているんですけど、出してもいいですか。」
「アオイ、そんなもの用意していたのか。気にしなくてよかったのに」
「私が作ったものなので、お口に合わないかもしれないので、申し訳ないのですが、プリンを持ってきました。」
「何、プリンだと。あのうまいやつか。アオイが作ったものが口に合わないやつは、味覚がおかしいやつだ。俺もまた食べたいから出してくれ。」
私は、小声でレオンさんにお土産を持ってきていることを説明したら、レオンさんに小声で出してくれと言われたので、無限収納からプリンを人数分出した。
無限収納は、時間停止の機能があるので、プリンは冷たいままですぐに食べられる。
「ミッシェル様、これお土産になります。よかったら召し上がってください。」
「見たことないが、何だこれは」
「父上、これは、プリンというデザートです。今までに食べたことがないほど美味しかったです。」
レオンさんは、ミッシェルさんや家族にプリンの説明をした。
それから、皆でプリンを食べることになったのだが……
「うん。やっぱり何度食べてもうまいな。」
「「「「……」」」」
レオンさんは、美味しいと言いながら食べているが、家族の皆さんは、無言で食べている。
食べ続けているので、口に言わなかったということではないと思うけど……
「レオンの言うとおり、プリンというのは、うまいな。」
「美味しいわね。どこで売っているのかしら。」
「「うまい」」
ミッシェル様をはじめ、レオンさんのお母さんのエリザベス様も弟さんのノリス様とカール様も気に入ってくれたみたいだ。
エリザベス様、どこで売っているか気になったみたいですね。
でもレガールは、王都の一般区域にある食堂ですし、貴族の方々食べに来られるようなお店ではないのですよね。
それにテイクアウトは、行ってないですしね。どう説明したものか。
「どうした。アオイ。」
「レオンさん、エリザベス様は、どこで売っているか気になられたみたいですが、どう説明したものかと」
私は、小声で説明した。
「俺に任せておけ」
レオンさんに任せて大丈夫かな。
「母上、このプリンは、王都の一般区域にある店で、提供しているものなのです。」
「そうなのですね。一般区域でですか。でも貴族区域の店でもこんな美味しいデザートはありませんわね。
今度、王都に行った時に買いに行ってみようかしら」
「母上、その店は、食堂なので、テイクアウトは、出来ませんよ。」
「あら、ではなぜ、お土産として持ってこれたのかしらレオンさん。」
そうなんだよな。テイクアウトできないのにお土産として出したから、どう説明したらいいのか悩んでいたんだよね。
レオンさん、お願いですから、また余計なこと言わないでくださいね。
「母上、このプリンは、アオイが作ったものなのです。だから持って来れたのです。」
私の願いは叶わなかった……
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