第参拾漆話 お祝いしました(後編)

 マーガレットさんが私たちの席に来た。


「お待たせした。ご注文伺います。」


「うちは、厚切りキングバイソンのダブルステーキセットのライス特盛と生ハムとチーズのピザ、あとドリンクに赤ワインの炭酸割りで」


「子供なのにお酒なんて飲んでいいの?」


「ああ、普通のお酒は十五歳からじゃないとアカンけど、ワインを水や炭酸水で割るのは小さな子供でも飲んでいいよ。」

「まあ、うちもいくら飲んでOKやけど普段は飲まんけど、今日はお祝いやからな。」


「なるほどね。果実水にしようと思っていたけど、私もそれにしよう。」

「私は、キングオークの厚切りロースカツセットのライスとコカットリスの唐揚げとシーザーサラダ二人前で」


「ご注文は、厚切りキングバイソンのダブルステーキセットがライス特盛でお一つ、生ハムとチーズのピザがお一つ、キングオークの厚切りロースカツセットがライスでお一つ、コカットリスの唐揚げがお一つ、シーザーサラダが二人前に赤ワインの炭酸割りがお二つでよろしいですか。」


「「はい。よろしいです。」」


「はは。では料理ができるまで少々お待ちくださいね。」


 注文を確認したマーガレットさんは、私たちの注文を伝えるために調理場の方に向かっていた。


 炭酸で割られてアルコール度数が低くなっているとはいえ、異世界での初のアルコールだ、楽しみだな。

 日本ではお酒は二十歳からだったけど、異世界では十五歳からOKか。まあ日本が二十歳からと決まっているだけで、他国では二十歳未満でもお酒OKな国はあったけどね。はやく成人したい。

 そうです。転生前の私は飲んべえだったのです

 日本酒もあるけど、それはまだ飲めないけど、刺身が食べたい。

 まあ異世界は生で魚食べるかわからないけど、海が近くないからターブルロンドでは確認できないでいるけど、まあランクの高い冒険者に聞けば、海の近い都市とかに行ったりしているだろうからわかるかもな。

 伯爵家の三男がいたわけだし、刺身も異世界に根づいているだろう。きっと。


「アオイ、なにボーッとなにか考えてるん?」


「ああ、炭酸割りとはいえアルコール飲むの初めてだなあってね。」


「アオイは四歳だもんね。うちも初めて飲んだのは四歳の頃やったよ。みんなそのくらいから飲み始めるね。」


「そうなんだ。それにしても注文した食べ物、私が頼んだシーザーサラダ以外、がっつり系ばかりだね(笑)」


「そやな。まあ、いいんちゃう。」


 そんな話をしていると料理が運ばれてきた。


「お待たせした。厚切りキングバイソンのダブルステーキセットとライス特盛です。こちらが生ハムとチーズのピザです。

キングオークの厚切りロースカツセットとライスです。コカットリスの唐揚げとシーザーサラダです。あとドリンクの赤ワインの炭酸割りです。ご注文はすべておそろいてますか?」


「「はい。」」


「アオイちゃん、炭酸割りだけど初めてのお酒楽しんでね。でもあそこにいる人たちみたいに飲みすぎないように気をつけてね」


 マーガレットとさんが示す方を見ると常連さんたちがお酒で陽気になって完全にできあがっていた。


「はい。気をつけます。」


「では、ごゆっくり」


 マーガレットさんが立ち去ったあと私とアイラはワイングラスを持ってお祝いを始めた。


「まずは乾杯やな。」

「アオイのGランク昇格と」


「アイラのFランク昇格を祝って」


「「かんぱ~~い」」


「「おいし~い」」


「料理も食べよう。普通のロースカツは食べた事あるけど、キングオーク、それも厚切りだから一切れがスゴい。」


「うちの厚切りキングバイソンのステーキもスゴいでぇ、しかもダブルにしたからな」


 私たちはお祝いをし、料理に会話に楽しんだ。

 途中で常連さんたちが混ざってきてお祝いの言葉と料理をくれたり、ワインの炭酸割りを追加注文してくれて、レガールに今いるみんなで改めて乾杯したりして、たくさんの人にお祝いされた。


「ああ、食べ過ぎた~」


「そやな。自分たちで頼んだのもけっこう量あったけど、常連の人らが料理くれたりしたからな。」


「カトリーナさ~ん」


 お腹いっぱいだが、例のあれを追加注文するべくカトリーナさんを呼んだ。


「はいはい。アオイちゃんなにかな?」


「例のあれをお願いします。」


「了解」


 プリンを取りにカトリーナさんは調理場の冷蔵庫へ行った。


「例のあれってなんなん?さっきも言ってたけど?」


「来てのお楽しみだよ。」


 プリンを持ってきてもらうことにした。

 きっと、アイラも喜んでくれると思っている。


「お待たせ。レガールの新メニューのプ・リ・ンで~す」


「待ってました。」


「アオイ、なんやこれ。これが例のあれか?」


「そうだよ。プリンっていうんだよ。おいしいから食べて食べて」


「わかった。いただきます。」


「うまぁ!!」


「なんやこれ。甘くてめっちゃ旨い。こんなん今まで食べたことあらへん」


「よかったよ。喜んでもらえて」


「私もたあ~べよ。いただきます。」


 予想通り、アイラは喜んでくれました。

 今まで食べたことは、ないでしょうね。

 今までこの世界にはなかったのですから……

 そんなことを思いながら私も食べ始めた。


「これ、何でできてるんや?めっちゃなめらかやん」


「これは、コカットリスの卵とあと一昨日まで三日間手伝いに行っていたアーノルド牧場のミルクバイソンのミルクで作っているんだよ。」

「私たちがアーノルド牧場の依頼を受けることになったのは、これを新メニューとして出すためにレガールが仕入れ量増やしたからだよ。」


「そうやったんか。卵とミルクでこんなうまいもんができるんか。驚きや。」

「でも何でそれをアオイが知ってるん?」


「私も一緒に作って、試食会に参加したからかな。」


 アイラに何でできているかとアーノルド牧場を手伝いをすることになった理由を簡単に説明した。

 何で私が知っているかは、私も一緒に作ったからということにした。完全な嘘ではない。

 私が教えたが、説明しながらダニエルさんと一緒に作ったんのは間違いないのだから……


 私たちが見たことをないものを食べていたので、周りのお客さんも気になったようで、美味しいらしいと聞いて注文し、食べていた。

 みんなにも好評のようだ。

 よかった。よかった。これでプリンが広まって行けばいいな。


「プリンも食べたし、そろそろ帰ろうか。」


「そやな。」


「でも、プリンのこと秘密にしていたんや?」


「それはアイラを驚かせたかったから」


「さいですか。思惑通りめっちゃ驚きましたよ。」

「じゃあ、支払いして帰ろか。」


 黙っていていたことをアイラは、ちょっと不貞腐れていてたけど、私たちは支払いしに向かった。


「カトリーナさん、会計お願いします。」


「アオイちゃん、アイラちゃん、支払いはいいって店長が、ランク昇格のお祝いだって、あと二人のおかげで周りも注文していい宣伝になったから今いるお客さんがプリンを更に宣伝してくれるだろうって言ってたよ。」


「「マジで(か)!!」」


「私たちけっこう食べたり、飲んだりしたよ。」


「そやな」


「いいのいいの。店長がそう言っているのだから甘えちゃいなさい。お祝いなんだから。」

「それにプリンも宣伝できたし、話が広まって大忙しになるだろうしね。

だからアオイちゃんには近々手伝いにきてもらいたいってさ。」


「わかりました。手伝いにきます」


「うちも手伝いに来てええか。貢献度ちゃうから報酬はアオイと同じでなくていいから……」


「それは、店長に聞いてみないとわからないな。

聞いてくるね。」


「OKだってさ。」


 カトリーナさんは、調理場にいるダニエルさんに聞きに行き、OKをもらえて、アイラもレガールの事後依頼受けれるようになった。

 私たちは、レガールをあとにし、軽く世間話をしたあと別れてそれぞれ家に帰った。


 今日はいいお祝いになった。

 しかしプリンも好評だったけど、プリンだけ注文ってのも考えられるからレガールはご飯を食べるため店なので、プリンだけってのはちょっとな……

 まあ、ダニエルさんにもしそうなったら相談してみよ。


 プリンの事は気になったが昇格して、お祝いもしたし、身体も満たされたので明日からも頑張るぞと思いながら帰るアオイであった。

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