好きとか恋が分からない
夢見 望
第1話 好きとか恋が分からない
どうも皆さんこんにちは。俺の名前は
「なあ、和也。恋って一体なんだと思う?」
「いきなりな話しな上にそれを俺に聞くのは間違っていると思うぞ?」
俺の隣にいるこいつの名前は、
「大体、お前そういう話しなんて今まで興味無かったろ。何かあったのか?」
「う~ん、実は昨日女子に告白されて」
「またかよ。相変わらずモテるな」
京谷は、イケメンと言われるような存在だ。モデルみたいに背が高く、細身に見えて結構筋肉も付いている。勉強は全国でも上位に入る程に出来て、運動はサッカー部に所属しエースとして活躍している。モテる要素は盛りだくさんなのだ。
そんな京谷とパッとしない俺がどうして親友なのかと聞かれれば、知らん。さっきも話したように小さい頃からの付き合いだ。
「モテてもあまり良いことは無いよ」
「ははは、俺はモテないから良く分からないな」
「ごめん」
「おい、謝るな。俺が惨めになるだろうが」
モテモテの京谷とは違い俺はモテた事無いし、告白された事無いし、生まれてこのかた彼女いたこと無いしで無い無い尽くしだ。
「それで? 告白されてどうしたんだ? まあ、その感じだと断ったんだろうけど」
「よく分かったな」
「お前の告白されたという報告を何回聞いたと思ってんだ。流石にもう分かる」
京谷自身は恋愛に興味が無く、誰かに告白されても全て断って来ている。ただ、そういう話しを他の人には聞かれたくないらしくて、俺にだけ話してくれている。俺もクラスで話しが広がって京谷が困るのは見たくないので、その方が良いと思っている。
最初の頃は、報告を受ける度に羨ましいとか思っていたが途中から、またか、と思うようになった。
「お前は、恋愛に興味無いくせに誰かを振った後は何処か辛そうにしているからな」
「告白する事が勇気のいることだって事は一応知っているから、そういった気持ちを断るんだ。涙を流している子もいたよ」
「告白の度にお前は傷付くのか? そこまで深く考える必要ないと思うけどな」
「和也も告白されたら分かるんじゃないか?」
「はっはっは、そんなことは有り得ないと断言出来るが、仮に誰かに告白されたら俺は断ることは無いな」
「どうして?」
「どうしてって、彼女欲しいからだよ」
「でも、告白してきた女子が和也の好みじゃ無かったら?」
「それは、丁寧にお断りする」
「最低だな、和也は」
「うるさい、俺はわがままなんだ」
「そうだな、彼女が欲しいと言っているのに、自分の好みじゃないとダメなんて言うんだから正直クズだな」
「うっ、それは、まあ認めるが」
「あはは、認めるのかよ」
京谷は、クラスでだとあまり笑わないが俺と話している時は結構笑っている気がする。京谷は笑うときは、優しそうに笑う。今は、俺が笑われてるんだけどな?
「まあ、人に何か言える立場では無いが恋が何か考えるより好きな人でも作った方が良いんじゃないか? 知らんけど」
「なるほどね、和也は好きな人いないの?」
「残念ながら、というか俺の場合好きになっても無理だって諦めるしな」
「どうして諦めるんだ?」
「自分がブサイクだという自覚があるからな」
「そうか? 俺から見たらそんなブサイクには見えないけど」
「そこは、カッコイイて言ってくれるものじゃないのか?」
「ごめん、お世辞にもカッコイイとまでは言えないかな」
「この野郎はっきり言いやがって」
俺は、中身を飲み干した紙パックを握り潰した。別にキレて潰した訳じゃないから安心して欲しい。
「好きな人ね~、そういや明日確か転校生が来るんじゃなかったか? 男子か女子かは分からないが」
「それがどうしたの?」
「お馬鹿、転校生だぞ? もし、女の子だった場合その子と恋人にまで発展する可能性だってあるじゃないか」
「流石アニメオタクは考える事が違うな」
「オタクじゃなくても、転校生には何か期待してしまうものだと思うが?」
「もし、それが運命の相手だったら恋について少しは分かるかな?」
「さぁ、どうだろうな。まあ、お前に好きな人がいたら全力でサポートさせて貰うぜ」
「仲を引き裂く?」
「お馬鹿、親友の幸せを壊すようなことはしねぇよ」
「他の人にならする可能性あるんだ」
「知らない奴のイチャイチャとか見るに堪えないだろうが」
「それじゃあ、和也に好きな人が出来たら俺もサポートするよ」
「京谷のサポートがあるなら間違いないな」
「そこまで期待されても困るけどね」
午後の授業の予鈴がなり、俺と京谷は教室へと戻っていった。俺と京谷は2人とも窓際の席で俺が一番後ろで京谷がその前の席になっている。お腹も膨れて眠い中、気持ちの良い日差しと心地良い風によって更に眠気が増してくる。あくびをしながら授業を受けている俺は自然と京谷の姿が目に映った。
京谷は、ずっと窓の外を見ていた。何を見ているのか、ただボーッとしていただけなのかは分からないが時々前を向いたかと思えばまたすぐに外を見ていた。
もしかしたら、さっきの恋について考えているのかもしれない。俺も、頭を悩ませながら少し考えてみたが分からない。
「恋・・・ねぇ」
何も思い付かないまま、俺も窓の外を何も考えずに授業が終わるまで見ていた。
1日が経って、今日は転校生が来る日だ。結局昨日は、学校が終わった後京谷は部活に行き俺はそのまま帰宅した。
朝は、家が隣だから京谷といつも学校に行っている。別に約束した訳でも無いが、何となく一緒に登校している。昨日のあの番組見たかとか、内容の無い話しをしながら学校に着き席に座った。
HRのチャイムがなり先生が入って来た。
「皆には事前に伝えておいたが今日このクラスに転校生が来る」
クラスのテンションは一気に上がった。男子が来るのか、女子が来るのか、カッコイイのか可愛いのか、それぞれ何かを期待している。
「はいはい、落ち着いてくれ。そんなに騒いでたら入りづらいだろう?」
先生が注意すると、一旦皆落ち着いた。
「よし、それじゃあ入って来てくれ」
教室の前の扉が開き、誰かが入ってくる。入ってくるなり教室中がざわめき出す。転校生は2人いて、2人とも女子だった。1人は、髪は落ち着きのある色で肩よりも少し長めだった。全体的にスラッとしていて清楚な印象を受けた。
もう1人は、明るめの色で髪をゴムで1つに結んでいた。身長は女子の平均くらいだと思うが、出てるところはしっかり出ているのが制服からでも分かった。
えっ? 変なところ見るなって? 俺は男なんだからそういう所を見るのが普通なんだよ。京谷は知らないけど・・・。
京谷は、半分だけ体を傾けて俺に話しかけて来た。
「2人も転校生が来るなんて驚いたな」
「ああ、しかも2人とも美少女だ」
「それで? 彼女たちとの運命は分かった」
「ふっ、告白して振られる未来まで見えたぜ」
「悲しい未来だね。でも、告白する未来はあるのか」
「俺が振られる話をするのにそう言っただけで、告白する度胸は無いから安心しろ」
「それは残念だ」
「俺より、お前の方はどうだったんだ? 何か運命を感じたか?」
「運命かは分からないけど、何かを感じはしたかな?」
「マジで!? えっ、ど、どっちだ?」
「落ち着けって、どっちらかというと右の清楚な感じの人かな」
「ほお~、ああいう子が好みだったのか」
「まだ、分からないよ。ていうか、その不気味な笑顔はどうしたの?」
「おっと、失礼。お前があの子とくっついた時、どういじってやろうか・・・あ、間違えたどうやって祝福してやろうかと思って」
「本音が、だだ漏れだったね」
「それじゃあ、2人の席はそれぞれ、天原と黒木の隣に座ってくれ。天原と黒木はこの学校に慣れるまで面倒見てやってくれ」
「えっ? マジっすか」
どうやら、俺と京谷が話している間に2人の自己紹介は終わっていたらしく座る席も決まったらしい。
クソっ! 俺としたことが美少女の自己紹介を聞き逃すとは。
「大丈夫? 何処か具合悪いの?」
俺がもがいていると明るい髪をした転校生がすでに隣に来ていた。近くで見るとその美少女度がより一層分かる。
「あ、いや、大丈夫。何でも無いよ。えっと・・・」
「あ、もしかして、さっきの自己紹介聞こえて無かったかな? ここ一番後ろの席だもんね」
「(ごめんなさい、多分聞こえてたけど聞いていなかっただけです)」
「それじゃあ、改めて、私の名前は
「えっと、俺の名前は天原 和也、よろしく」
「天原君だね、この学校のことまだよく知らないから色々教えてね」
「お、俺の教えられる範囲で・・・」
「うん!」
「(ま、眩しい! 笑顔が眩しいよ。クラスの男子達から何か殺気みたいなのを感じるけどそれすら消し去ってしまう程に~。ダメだ、俺一人では対処しきれない。頼む、助けてくれ京谷!)」
「俺の名前は、黒木 京谷。よろしく」
「
「その~、何か困ったことがあれば力になるので」
「えっと、それじゃあ、学校のことを教えて欲しいです」
「(クソっ~~! 裏切ったな、京谷! 何でそんな自然に話せてるんだよ~~!)」
もう1人の転校生は、どうやら白山さんと言うらしい。俺は、桜木さんと自己紹介をするだけで緊張していたのに、京谷はごく自然に白山さんと話していた。
「ねえ、天原君」
「ど、どうしました?」
「何で、敬語なの?」
「いや、初対面の人とはどうしても敬語になってしまって」
嘘である。俺は、女子と会話をあまりしたこないからどう話せば良いのか分からないだけである。
「そうなんだ、でも同じクラスになったんだし、タメ口で良いよ」
「わ、分かった」
「それで、今日の放課後暇かな? 学校の案内をして欲しいんだけど」
「学校の案内?」
「うん、もしかして忙しい?」
「え、いや、暇だけれど」
俺一人で案内したら会話が無くて絶対辛くなる。だが、ここで案内しないのも相手に失礼だ。俺が悩んでいると京谷が声を掛けてきた。
「和也、桜木さんを案内してあげるの? それじゃあ、俺達も一緒に行って良い?」
「和也、お前ならそう言ってくれると信じていた」
「桜木さんと白山さんもそれで大丈夫」
「うん」
「大丈夫だよ、えっと・・・」
「俺は、黒木京谷だよ。よろしく」
「黒木君だね、よろしく」
京谷の発案により、4人で学校を回ることにした。
放課後になり、約束通り俺と京谷で桜木さんと白山さんを案内した。案内している間に色々と話しをした。桜木さんは、ハキハキと話す人でスポーツが大好きらしい。運動系の部活に入る予定らしい。白山さんは、少し声が小さいが自分の主張することはしっかり言葉に出す人だった。趣味は、読書らしいが体を動かすことも好きらしい。まあ、ほとんど京谷のおかげで知れたことだけどな。
学校案内には結構時間が掛かっていたらしく、もう夕日が沈み始めていた。
「今日は、2人ともありがとう。学校のこと分かったし、楽しかった」
「私も、色々話しが出来て楽しかった」
「どういたしまして、俺達も楽しかったよ。また、何かあったら言ってくれ」
「流石、京谷。良かったな、2人ともこれからも京谷が助けてくれるってさ」
「どうして人事なんだ? 和也も手伝うに決まってるだろ」
「えっ? マジで?」
「マジで」
「そんな話し聞いてませんけど」
「天原君は私や白山さんと関わるのは嫌なのかな?」
「いや、別にそういう訳ではないけれど・・・」
「じゃあ、これからも仲良くしてよ、ね?」
「近い近い近い近い! そんな近づかれたら好きになるから止めてくれ!」
「えっ!?」
思わずとんでもないことを口走ってしまった。桜木さんがあまりにも近づいてくるのものだから離れてもらおうとしただけなのに、何を言ってるんだ俺は。
桜木さんもいきなりの事で動揺している。本当ごめんなさい。
「いきなり告白なんて、意外とやるね和也」
「違うから! えっと、ほら何だ、俺は女子との会話が少ないから勘違いをしやすいからあまり近づかないで欲しいという訳であって、告白をしたかったんじゃなく・・・」
「天原さんは、不純な人だったんですか?」
「白山さん、そんな冷たい目を向けないで下さい」
「ええっと、いきなりでビックリしたけど、とりあえず嫌われてる訳では無くて良かった」
「本当に申し訳ございませんでした」
俺は深々と頭を下げた。桜木さんの顔は気のせいか少し赤くなっている様に見えて、熱いのか手で仰いでいた。まあ、顔が赤いのはきっと夕日のせいだろう。
「良いよ良いよ、気にしないで。それよりも私達友達で良いんだよね?」
「はい、喜んでやらせて頂きます」
「どうしたの、その口調」
「私も、友達で良いのかな?」
「もちろんでございます」
「ここの4人はもう友達だね。そうだ、連絡先も交換しようよ」
それぞれ携帯を取り出して、全員と連絡先を交換した。俺の携帯に女子の連絡先が入るなんて思ってもみなかった。感動のあまり泣いてしまいそう。
「良かったね、和也。女子の友達が出来て」
「いや、本当夢みたい」
「少し大袈裟なんじゃ・・・」
「いやいや、白山さん、これは俺にとってはとても大きな事なんだよ」
「そ、そうなんだ」
若干引かれているかもと思ったが、別にそんな風には見えない。本当桜木さんと白山さん優しすぎる。
「それじゃあ、このまま皆で一緒に帰ろうよ」
「うん、そうね。一緒に帰りましょう」
「京谷、部活は?」
「今日は休みだよ。じゃなきゃ、学校案内やれて無かったよ」
「確かにそれもそうか」
「黒木君は何の部活に入ってるの?」
「俺は・・・」
今日会ったばかりの筈なのに馬が合うのか、すぐに仲良くなった。帰るときも最後まで会話が止まる事も無く話し続けた。その時は、俺もちゃんと話せた。意外にも桜木さんもアニメ好きらしく個人的に一番盛り上がった。
2人が転校して来てからは、少しだけ生活が変わった。今まで京谷と2人でしていたことを4人でするようになった。登下校だったり、昼食を食べたり、授業で好きに班分けする時なんかも一緒にいるようになった。周りから見たら俺はリア充なんじゃないかと錯覚するほどに。本当に楽しいんだけどね。
少し変わった事言えば、女子の前であまり笑わなかった京谷が2人の前ではよく笑っていた。俺的には、この変化はとても良い傾向だと思う。恋愛的な好きはまだかもしれないけど、2人のことを良く思っているのは間違いない。
学校以外でも、4人の都合が合えば一緒に遊びに出掛けている。俺が誘われてない、なんてことは1度も無かったのでとても安心している。近場だけじゃなくて、自分達のお金で行ける範囲で遠くの場所にも遊びに行っていた。
2人は春に転校して来たのだが、いつの間にか季節は夏になりもうすぐ夏休みに入ろうとしていた。制服も夏用の物に変わっていた。
今日は、朝早くに家を出て1人で登校した。日直の仕事で早く来ただけで別に3人に嫌われた訳ではないからな。誰も居ない静かな教室に入って荷物を置き、掃除を始める。いつも賑やかな学校も流石にこの時間は静かだ。床の掃き掃除が終わった頃、誰かだ廊下を走ってくる音がした。
換気の為に教室のドアは開けたままにしている。勢いを殺せなかったのか、ドアに手を掛けたもののそのまま滑りそうになっていた。
「お、おはよう。はあ、はあ、ごめん、遅くなっちゃった」
「おはよう。そんな急いで来る必要無かったぞ」
「はあ、でも、私も今日、日直だし、はあ、和也1人に任せる訳には」
「分かったからまず呼吸を落ち着かせた方が良いんじゃないか? 詩音」
息を切らせながら教室に入って来たのは詩音だった。今日の日直は俺と詩音になっていて・・・ん? どうして、名前で呼んでいるのかって? それは、仲良くなったからお互い名前で呼び合おうって言われたからとしか。断らなかったのかって? じゃあ、逆に聞くけど、可愛い女の子が顔を近づけて笑顔で『名前で呼んで良い?』なんて聞かれて断れると思いますか? 答えはNOだ。
そんな話しは置いておいて、詩音も日直だからと走って来てくれたらしい。とりあえず、自分の席に荷物を置いて休んでいる。
「ちゃんと、タイマーかけた筈なのに起きれなくて」
「いつもと起きる時間が違うからな、それでもこの時間に来たんだから偉いと思うぞ」
「本当は、もっと早く来るつもりだったんだよ」
「日直の仕事をそこまで真面目に取り組もうとする奴、中々いないけどな」
「いや、別に日直がやりたくて早く起きようと思った訳じゃ。早く来れば2人で話せる時間が増えるかなと思って・・・」
「何か言ったか?」
「な、何も言ってないよ!」
詩音が何か言っていたような気がしたが、気のせいだったんだろう。床掃除が終わって、黒板の掃除をすることにした。
「何か手伝うことある?」
「そうだな、俺がチョークの本数とか調べておくから黒板消しを綺麗にしてくれるか?」
「分かった」
詩音は、黒板消しを2つ持って窓の外でパンパンと音をならしながら汚れを落としていった。その間に、俺は自分の仕事をしていたのだが
「うわっ、結構粉が凄いね。教室の中には入ってない?」
「ああ、大丈夫・・・ん?」
粉が入って来ていないか詩音の方を見ると、詩音のスカートがめくれてパンツが丸見えになっていた。俺は、慌てて詩音にそのことを報告した。
「おい! 詩音、パンツ見えてるぞ!」
「えっ? きゃっ!?」
俺に言われて気付き急いでスカートを直した詩音だったが、その顔は真っ赤になっていて泣きそうな目で俺を見ていた。
「み、見た?」
「ごめん、がっつり見ました」
俺は、素直に報告した。この後に起こる出来事を覚悟の上で。
「正直に言ったのはよろしい、だけど・・・」
わなわなと震えている詩音の手が、バチーンと音を鳴らし俺の頬にクリーンヒットした。
それから数十分後、京谷と玲も学校に来た。
「和也、どうしたんだ? 顔が腫れてるぞ?」
「これは、戦士の勲章だよ」
「何を言ってるんだ?」
「詩音、和也君どうしたのかな?」
「・・・知らない!」
色々ハプニングが起こった日の放課後、4人で一緒に帰る途中で詩音がある提案をしてきた。
「ねえ、終業式の日の夕方からって皆予定空いてる?」
「私は、大丈夫だよ」
「俺もその日は部活が無いから問題無いね」
「むしろ予定を誰かに入れて欲しい」
「それじゃあ、皆で祭りに行かない? 近くの神社でお祭りやるんだって」
「良いね、次の日から夏休みだから時間ギリギリまで遊べるよ」
「近くの神社ていうと、去年屋台を出した所かな?」
「ああ、京谷のおじさんが屋台を出すって言うから一緒に手伝ったんだっけ?」
「うん、今考えるとよく捌ききったよね」
「ホントな、正直舐めてたよ」
「ふ、2人とも大変だったんだね」
「それで、どうなの? お祭りに行くの?」
「もちろん、行くよ」
「今度は、祭りを楽しみたいからな。それに2人の浴衣姿も見てみたいしな」
2人の浴衣姿を想像して思わず頬が緩んでしまう。
「和也、詩音と玲が引いているよ」
「ご、ゴホン、とにかく俺も京谷も祭りには行くのは間違いない」
「はあ、和也を誘ったのは間違いだったかも」
「ごめんなさい! お願いだから置いてかないで!」
「和也君もこう言ってるし一緒に行ってあげよう」
「そうね、玲がそういうなら一緒にあげても良いかもね」
「良かったね、和也」
「す、素直に喜べない」
「それじゃあ、終業式が終わった後1度家に帰ってから現地で集合にしよう。細かい時間はまた後で連絡するってことで」
「うん」
「分かった」
「了解」
こうして4人で祭りに行くことが決まった。
終業式が終わって一旦家に帰り祭りの準備をする。京谷を誘って早めに神社に行くことにした。
「京谷、お前浴衣持ってたのか」
「お父さんのお古だけどね。和也も浴衣で行くんだ」
「浴衣姿を見たいって言っておきながら俺は私服って訳にもいかないかと思って。まあ、2人が浴衣で来るか分からないけどな」
「どうだろうね」
履き慣れない下駄で祭りをやっている神社に向かう。俺達以外にも浴衣を着ている人を見かける。鳥居の前で待ち合わせをしたので、京谷と話しをしながら待っていた。
予定していた時間を5分程過ぎて2人が現れた。急いで来たみたいだが、慣れない格好のせいで上手く走れ無かった様子だ。
そう、2人は浴衣姿で俺と京谷の前に現れたのだ。詩音は赤色の浴衣で玲は水色の浴衣を着ていた。
「ごめん、遅れちゃって」
「大丈夫、そんな待ってないから、2人とも浴衣似合ってるね」
「あ、ありがとう、京谷君」
「ありがとう、誰かさんが浴衣を見たいって言うから仕方なくね」
浴衣姿で来てくれるかもと期待はしていたけど、想像以上だ。玲も滅茶苦茶似合ってて可愛いけれど、それ以上に
「折角着てあげたのに、何か言うことは無いの?」
「いや、その滅茶苦茶可愛い、と思います。悪い、これしか言えないけど本当に可愛いと思う」
「馬鹿だな、その一言が凄く嬉しいんだから」
さっきから動悸が収まらない。詩音の顔を上手く見れない。どうしてなのか、いや、もう分かってる。今まで気付かない振りをしていただけで、俺は詩音のことが・・・
「皆、集まったし、そろそろ行こうか」
「うん! 何を食べようかな、焼きそば、たこ焼き、りんご飴・・・」
「詩音は食べ物ばかりね」
「も、もちろん、他にも目的はあるわよ? えっと」
「金魚すくいとかはどう? 私1度もやったことが無くて」
「そ、それ、金魚すくい、私もやったこと無いから一緒にやろう、玲」
「うん」
詩音と玲の後ろを俺と京谷は付いて行く。俺の様子がおかしいことに気付いたのか京谷が話しかけてきた。
「和也、どうかしたの?」
「いや、別に・・・」
「何だか様子がおかしく思えたんだけど」
「流石、親友、よく見てるな」
「何かあったの?」
「恋って何かって話ししたの覚えてるか?」
「覚えてるよ」
「もし、好きな人が出来たらみたいな話しをしたよな」
「・・・詩音が好きなの?」
「本当、何で分かるんだよ。自覚したの遂さっきなんだけど」
「何となくかな、詩音への態度が少しだけ違って見えたから」
「そうだったのか」
「俺も、好きな人が出来た」
その一言に俺はとても驚いて、すぐに京谷の顔に視線を向けた。
「マジで?」
「うん」
俺は、今までのことを振り返った。そして、確証は無いが1人思い当たる人物がいた。
「もしかして、玲?」
「正解、気付いてた?」
「いや、今気付いた。確かに考えれば不自然な所はあったなと」
「恋が何か話したのって、数ヶ月前の話なのにね」
「2人とも好きな人が出来るなんてな」
「和也が言ってた通り、運命だったのかな」
「まだ、確証は無いけどな」
俺達の会話は、2人には聞こえいない。祭りに夢中になっている様子だ。
「告白する?」
「振られる可能性の方が大きく感じるんだよな」
「もう少し自身持ったら?」
「持ちたいところだけどな。京谷はどうする?」
「告白しようかなって思ってる」
「今日か?」
「うん」
「随分と冷静だな」
「まさか、緊張でどうにかなりそうだよ」
確かに、京谷の体は少し震えているように見えた。
「告白する人の気持ち分かったか?」
「よく分かったよ、上手く行って欲しいって気持ちも」
「・・・京谷なら大丈夫さ」
「・・・ありがとう、和也も大丈夫だよ」
「2人とも振られたら、一緒にカラオケにでも行って泣き叫ぼうぜ」
「俺は、そこにあの2人と一緒に笑いながら歌いたいかな」
俺と京谷はお互いの背中を叩き、気合いを入れた。
「2人ともどうしたの?」
「この祭り最後に花火もあがるから、それまでに分かれて食べ物買ってまた合流しようって話しになってな」
「へぇ、花火か~」
「でも、どういう風に分かれるの?」
「俺と詩音、京谷と玲の2組に分かれて行動しようってことになった」
「えっ!? 和也と?」
「京谷君と!?」
俺と京谷は目で合図をして、行動を移した。
「それじゃあ、和也、詩音、また後で」
「ああ、はぐれないように気を付けてな」
京谷は玲を連れて人混みの中に入っていった。
「もう、いきなりどうしたの?」
「俺も京谷も伝えたいことがあってさ」
正直、怖いけれど言葉にしないと伝わらないから全力で気持ちをぶつける。京谷も同じ気持ちかな。
「どうしたの? 京谷君」
「玲、少しだけ時間をくれるかな?」
1度深呼吸をして思いを伝えた。
「詩音」
「玲」
「「俺は君のことが・・・」」
さて、俺達の恋がどうなったのかは皆さんの想像にお任せします。ただ、俺も京谷もきちんと自分の気持ちは伝えたとだけ言っておきます。それじゃあ、お祭りを楽しんで来ますね。
好きとか恋が分からない 夢見 望 @12761476
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