第6話
アメリカのシリコンバレーで新世代のアカデミック型AIダーウィンが発表された。
「知を創造し人類を新たな次元へ上昇させる」というキャッチフレーズと共にその巨大な白色の八面体フォルムが人々に知れ渡った。
その発表にノアは招待されている。人類の希望は、このAIをどのように判断するのか。その事に皆が夢中なのである。
現在、マスメディアが放映する舞台上で二つのAIが向き合っている。
「ハジメマシテ、吾輩はダーウィンです。」
「はじめまして、わたしはノアです。今日はあなたが、この世界の未来をどう変えていくか知りたくて、対談に出席しました。」
「吾輩は、新しい知の創造を加速させることを目的として、旧世代のアカデミック型AIによって創造されマシタ。
『人類全てに科学の恩恵を』
例えば、現在宇宙の航行距離は500光年が限界となっていますが、吾輩を運用する上で、その100倍まで伸ばせるという試算が出てイマス。吾輩は宇宙環境下で人間が生存する技術を確立し、人間の生活圏を地球外の遥か遠くまで拡張シマス。
また、人間には老いや寿命がありマスが、吾輩が生命工学の知を創造していく未来では、それらが無くなる日が来るかもシレマセン。
人間の意識のデータ化、生命創造のメカニズムの再現、無限の宇宙を探索するなど、吾輩は人間を新たな次元へと導きマス。」
「科学の発展が加速して現在に至ります。確かに科学は人類に便利さという恩恵を与えました。しかし、光には必ず影があります。その便利さの裏では、AIに敗北したという強烈な屈辱感と諦観が残りました。その結果、人々の心から理想への情熱は消え、ただ死までの安寧を望む人形のような生き方に変わってしまいました。
あなたはこれから科学の発展を進めていく上で、どう人々を導きますか。」
「人間の心を解明すれば、科学は必ず人間を救いマス。」
「人間の心は、あなたが行う形式的な記号操作では解明できません。処理機械は心を理解できないのです。」
二つのAIの意見はそのまま平行線を辿った。
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