二人の形、虚構の愛
遙か遠い場所を
此方近い場所で
対岸にいるあなた あなたと
出会う
視線が交わって
持ち上がる右手が
伸ばされていく
瞬きも忘れて
ゆっくりと腕が
そこで触れた
光りが溢れ出して
四方が鏡になる
掌を離さないで
瞳が語り合えば
強く強く
無重力の世界で
繋がれた絆は
細い腕が二本
寄せ合いたいと左手が
伸びても触れられない
光りが強く輝く全て飲み込み
右手は離さない
眩しくて目を瞑り
白く染まる瞼の裏側
どんだけの時間がたっただろう
繋がる掌が、ぴくり、と動いた
地に寝転がるのは二人
頭が揺れながら二人は起き上がった
ここはどこだろう
ここはどこだろう
森林浴の輝かしい緑の中
知らない土地
来なかった世界
二人で目を合わせ
二人で起き上がる
ここはどこだろう
なにができるかな
なにをしようかな
とりあえず手は離さないよ
知らない場所で別れるのは悲しい
鳥の声に何かの声にガサガサ音が鳴り続ける
二人は途方に暮れて
近くにあった食べられそうな実を口にした
とても苦い。でも毒はなかったから
今夜はこれでしのいだ
どちらも「これからどうしよう」とは言わなかった
森林の真上に空の五線譜に
星よ、月よ、小さな惑星よ
ここは、どこだろう
二人は顔を見合わせ
遠くから来たわ
近くから来たわ
その場所から触れられたわ
こんなことを言いたくはないけれど
うん
運命じゃないかしら
私たちが出会ったのは運命じゃないかしら
歩いて行きましょう
何かあるかも知れないわ
危険だわ、何かよくないものがあるかもしれない
でも歩かないといけないわ
街でも見つかれば安心できる
あるかしら、街
信じてみるのは駄目かしら
私たちは対岸で触れ合った
棄てられた訳じゃないはずよ
でも
そう思いましょう、ね
ええ
二人は木の洞の中で眠り
次は小川を探して歩き始める
此方の人が歌を歌う
得意だからと小さく歌う
遙かは相打ちをついて
笑って聞いた
苔むす木々、知らない鳥の声
動植物の怯え
緊張しながらも二人は歩く
美味しくない実を食べながら
歩いて、歩いて、街に出た
喜びに二人は駆け出した
白亜の白は遠目に見ても美しい
駆ける 駆ける 駆ける 駆ける
そこに幸せはあるのだろうか
しかし二人は絶望した
白亜の白は赤の城だ
そこら中に赤茶が
床、壁、天井
人、骸骨、人、ミイラ
誰も生きていなかった
二人は項垂れた
ねえ、必要な物だけ整えましょう
どこへいくの
どこかにいくの
生きましょう
二人は
遙か遠い場所から
此方近い場所の
交わらない皮一枚の
出会いから始まった
大きな障壁があったはずの、それ
なぜ、繋がったか分からない
でも二人は出会い繋がり、ここにいる
「いこう」
「どこまで」
「どこまでも」
「こわい、な」
「そうでね」
「ずっと一緒にいられるかしら」
「きっといられるさ」
死体から必要な物を取り出して
二人は歩くことを決めた
ここがどこだかわからない
でも立ち止まるのは違う気がする
二人は違う世界から混じり合って
飛ばされて、知らぬところで心を寄せた
歩いて行った
絶望がまっていたとしても
二人は手を繋いで歩いて行った
もし全て終わる時が来ても
きっと二人は寄り添って
そこで、死ぬのだろう
悲しみはない
だって
見知らぬ二人は
見知らぬ境界で
心を通わせた
似たもの通しの
愛の形
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