明日には逮捕

例えば十字路の真ん中で

壊した亡骸を刻んでみる

関節を順に外しながら

使えなくなる刃物たち


そうじゃないの

そうだったんだから

襲う貴方が悪いんだ


赤が零れていく

黒が零れていく


それは目を見開いて

絶命していて


私はもう後悔しない

こいつが悪いから死んでいい

「手伝いましょうか」

刃の切っ先を向けた先

ただの青年が困った顔で私を見た

血だらけの地面と臓物と

ここにあるのは吸えた匂い

「ビニール袋もってきますね」

人影は近くのアパートに入ってく

古き漆黒の袋を持って

私の隣に座って臓物を入れていく

どうしてそんなことするの

「……」

「知っていたんです、この男」

青年は言う

付きまとわれていたと

「無視をしていた」

「すみません」

慰めにならない不甲斐なさ

何故、助けてくれないの

何故、怖がるの

何故、殺させるの

血反吐の喉

「あなたは酷い人だわ」

警察に電話をしても役に立たない

見届けるだけ

何度つかみかかれたか

相手はへなちょこで助かった

いつもいつも走って変える

いつ死ぬんだろう

今度は死ぬのか

明日は死んで笑われる

そんなのはイヤだ

負けるのはイヤだ

こいつは見てただけなんだって

殺した方がいいんじゃないの

「これが終わったら殺していいですよ」

思わずの言葉

崩れた笑顔

追い詰められた笑みこぼれ


あなたは血の味しりなさい

ぐちゃぐちゃの臓物を

目の前に掲げて青年に渡す

そしたら彼は口にしない


大嫌いだ、こんな世の中

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