傷の後悔

傘の下で怒りを買った

勝つことはできないけれども

私は怒りを覚えた

腹の底からの不快感

傘の下で棒立ちの自分

現実がやけにはっきりとわかる

わかりすぎて「そう」と言うしかない

「そうですか」「そうですね」

怒鳴られてもスルーした

「そう」と聞き流す

今や何を言われたかもわからない


傘の下で怒りを買った

勝つことはできないけれども

私は怒りをなくしてしまった

腹の底を吐き出したのに

事実にもやがかかっていて

「……」なにも言えなかった

「……」「……」

怒鳴られたら黙った

「……」

今や何を言われたか覚えていない


本当に覚えていない

明日はどうしようか、とか

普通に考えてた

わめく人を見ると冷静になった

なんでこんなに怒っているのか

一ミリもわからない


その人の立場になって考えてみろ

そういわれたので考えてみる

小説だったら行間を読めるのに

現実になるとわからない

その人が過ごしてきた日々とか

故人への気持ちとか

積み重ねが違うのだから

八つ当たりをしないでほしい


傘の下で怒りを買ったのは

降りかかる言葉が雨のようだったから

そして私を避けて流れてく

しかし靴が汚れてしまった

私は靴を履くたびに思い出す

言い返す?

違う、どうしてそうなったのか

どうして故人を救えなかったのか

怒りなどどうでもいい

勝手に買わされたのだから


どうして、あの人を救えなかったのか

ただただ、それだけが

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