第32話 アイスクリームうめえ

「思い出したわ!」


 アイスクリームうめえとか感動している場合じゃなかったかも。

 そうよ。ファフニールとジェラールたちの問題は確かに解決したわ。

 だけど、彼らの村? 国? が干ばつで苦しんでいることは変わらない。

 

「サエ?」

「コトリ?」

「サエクオ?」


 ファフニール、トッピー、ジェラールまで私の名を呼ぶ。

 あら、私ったらはしたない。

 ついつい大きな声で叫んでしまったわ。おほほほ。

 

「ジェラール。うまくいくか分からないけど、小麦と大麦の種ならここにあるの」

「小麦なら少しは育てているけど」

「何でもいいんだけど、白菜もあるわよ。でも、パンにして食べることができるものがいいわよね」

「そらまあ、そうだけど」

「明日まで待ってもらえるかな? いろんな種を持って帰って、それで何とかならないかな」

「水が不足しているんだ。水田が干からびそうになってんだ」

「どうなるか私にも分からない。でも、ここの種ならジェラールのところで育てている作物と少し違うかもしれないじゃない」

「ありがとな。持って帰ってみるよ」


 うまくいくか、いかないかは未知数だけど。やらないよりはいいよね!

 そうと決まればすぐ行動よ。


「畑を見てきます」


 そう言い残して一人、畑に向かう。

 向かうと言っても家の反対側に移動するだけだけじゃないのとか突っ込みは受け付けてませんのであしからず。

 誰が突っ込むんだよ? 私以外に誰がいるってのよお。

 ……。虚しくなってきたわ。何度目よこのノリ。

 隊長は肝心なところで突っ込んでくれないし。寡黙な男の人も嫌いじゃないけど。むしろ好き。

 ほら、場末のバーとかで一人隅っこでバーボンか何かを飲んでいるのよ。

 絵になると思わない? 

 それでそれで、こう落ち込んでいる佐枝子が反対側に座ってさ、バーのマスターがお酒を出してくれるのよ。

 「お嬢さん、あちらの方のおごりです」とか言っちゃって。きゃあああ。

 大人になったら、そんな体験もできるのかしら。

 

 さてと、畑についたわよ。

 佐枝子、ちゃんと覚えているんだからね。

 

「イルカくん。畑を増築よ」


 イルカが尾びれをブンブン振ると、畑の面積が倍になった。

 おお。パワフルパワフル。相変わらず仕事が早い。

 追加された作物とかあるかな。

 お、おおお。タマネギ、ジャガイモ、ニンジンの三種の神器が追加されているわ。

 主力の三姉妹。団子じゃなくて、姉妹よ。

 盗賊の方が、団子よりカッコいいじゃない。気持ちの問題ね。

 もちろん、全部購入して更にアイテム一覧を眺める。

 カレールーは、カレールーを寄越せええ。

 

「……酷い。なんてことを。三姉妹を追加しておきながら、肝心のボスがいないって、このすかぽんたんー」


 でも、全部植えちゃう。

 ジャガイモとかタマネギって環境変化に強いとか聞いたことがあるし。

 ジェラールの村でも育つかもしれないものね。

 残りゴルダは……まだ行けそう。

 

「イルカくん。畑を更に増築よ」


 イルカが……以下略。

 これで最初の面積と比べると三倍にまで畑が拡張したわ。

 

「聖女の魔法は不思議なものなんだな」

「そうだ。俺も面食らったものだ」


 いつの間にかぬめぬめとファフニールが並んで腕を組み、何やら納得し合っている。

 ジェラールたちまで来ているじゃない。

 ひょっとして、私の鼻歌まで聞いていた? たぶん、聞こえていないから平気よ。

 

「ついでなので厩舎にも行ってきます」

「なら俺は果実を集めてこようか」

「ありがとうございます!」


 ファフニールが手伝いを買って出てくれた。

 すると、今度はトッピーが。


「池に魚がいると聞いた。私が魚をとってこよう」

「もういないかもしれませんが、お願いします」


 カエルだし。泳ぎは得意よね。うんうん。

 

「俺たちも何かできることがあれば協力したい。俺たちの為にサエクオが動いてくれているんだ」

「じゃ、じゃあ。砂場で砂を掘り返してみて。綺麗な石があれば集めて欲しいかな」

「分かった」


 ジェラールとエルファンまで手伝ってくれることに。

 作物以外はゴルダ稼ぎと今日の夕食だけど。ゴルダが増えると種をもっと準備できるので、できるだけ増やしたいものね!

 あ、そうだ。おともだちも追加できるのだったっけ。

 今度こそ、ビーバーを。いえ、別にもう別の生物でもいいんだけど、ビーバーをお願いしてカワウソが出て来たから、何だか意地になるじゃない?


「イルカくん、おともだち一覧を出して」


 あれ、ビーバーが一覧から無くなっているわ。

 そっかそっか。そう言う事ね。

 

「カワウソくん、君に決めた。イルカくん、おともだちを追加して」


 これで、池にビーバーが追加されたはずよ。

 ビーバーを頼んでカワウソが来たのだったら、カワウソを頼めばビーバーになるんじゃないかな。

 今度はしゃもじじゃなくて、ちゃんとした平たい尻尾を拝めるに違いないわ。

 

 厩舎も拡張しようと思ったけど、まだ一部屋空いているから新しく追加された家畜を空いた部屋に向かえることにしたの。

 

「羊さんで」


 ヤギと羊が追加できたので、羊にしておいたんだ。

 ヤギをお迎えするのだったら、厩舎の拡張が必要ね。ゴルダを置いておきたいし、今はこれで。

 羊はすぐに羊毛を回収することができて、これをそのまま売れば羊の代金を回収できたの。思ったより収入が多くてビックリ。

 

 厩舎を出たところで、濡れそぼったカエルとエンカウントする。


「トッピーさん、どうしたんですか?」

「コトリ。池に変な生物がいただろう?」

「カワウソですよね。しゃもじを括りつけた」

「カワウソというのか。一体だけだったのだが、突然、空からもう一体振ってきたんだ。特に害がないのなら、そのままにしておくが。どうする? 排除するか?」

「い、いえ。そのままで……」


 な、何てこと。

 まさかカワウソが二匹になっているなんて。ビーバーは? ビーバーはどこにいったのさあああ。

 と、想定外のことがいろいろあったけど、やれることはやったのでみんなの帰りをテーブルのところで待つことにしたの。

 

 ◇◇◇

 

 すごい。みんなすごい。

 トッピーは魚こそもういなかったみたいだけど、何と池の底からサンゴぽい何かと真珠ぽい何かを発見して持ち帰ってくれた。

 ジェラールとエルファンは先日ファフニールに手伝ってもらった時の倍ほどの宝石を持ち帰ってくれたの。

 ファフニールはリンゴだけじゃなく、ブドウと桃に加え、ハチの巣まで発見してくれたんだ。

 佐枝子の探索がいかにしょぼかったのかを改めて。池と砂場はともかく、木は何とかなったはずよねえ。

 でも、昨日と今日は探検に行っていないから、その間に生えてきたのかもしれないわ。

 

 この日はみんなで食事にして、男性陣が外で野宿となったのだった。

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