第144話 死刑?

ワカナ襲来から翌日、エンジの迅速な報告を受けたカーズとレフトンは衝撃を受けた。二人の王子はすぐにエンジとミルナのもとに向かい、現地で状況を把握した。取り合えずコキア領地の町の役所を借りて、エンジとミルナが詳しいことの経緯を語った。


「そうか。そんなことが………」


「すまん! そっちに行くとは失念していた。俺のミスだ! 本当に申し訳ねえ!」


ワカナが姉サエナリアの侍女だったミルナを逆恨みして愚行に出たことは、二人の王子を驚かせた。脱走した後に何かしらの問題行動を起こすとは思っていたが、一週間もしないうちにコキア領地に来ていたミルナを襲撃するとは思ってもいなかったのだ。


「ご安心ください。私は無傷で済んでいますし、無事に彼女を捕らえたのは良かったではありませんか。それに私の頼もしい婚約者が駆けつけてくださったのですから殿下が頭を下げる必要はありません」


「そうだぞレフトン。お前は王族なんだから軽々しく頭を下げるなよ」


「しかし……」


「いい加減頭を上げていただかないと、私の方が申し訳なく思います。仮にも王族の方ですし」


「……そうか、それもそうだな。考えてみりゃあ襲ったあの女が一番悪いしな」


ミルナとエンジに諭されて、レフトンは頭を上げて苦笑する。カーズの方は無傷どころかワカナを取り押さえたというミルナに感心した。


「それにしても、エンジが来るまでよく無事でいたものだ。あんなに気性の荒い女を相手に。しかも聞けばナイフも持っていたそうじゃないか」


「ふふふ、私ほどの侍女となれば護身術くらい身に付けていて当然なのです。貴族から平民になった身の上ゆえに、何としても生き残るため多くのことを率先して学んだのですから」


ミルナは誇らしげに胸を張って笑みを浮かべる。彼女の壮絶な人生を知るレフトンやエンジは説得力を感じて納得できた。カーズも弟の納得顔から察してこれ以上は何も言えない。


「ははは、護身術、か。そんなもんを身に付ける侍女はあんたくらいだよ。まあ何にせよ、あの女と協力した馬鹿を取っ捕まえることができて良かったよ」


「彼女と協力者の男はどうなりますの?」


「謹慎中に抜け出したんだ。しかも、その後で殺人未遂の罪。今度は謹慎どころではすまないだろうな」


「修道院行きも生温いと判断されんだろうぜ。なんせ殺人をしようとしたんだからな。よくても数十年牢屋で過ごすことになるが、今のミルナさんは貴族に戻ったんだ。最悪死刑になるのは間違えねえな」


死刑。そんな残酷な言葉を聞いても誰もがワカナに同情できない。ソノーザ家の裁判以前からどんな女だったか分かっているだけに自業自得としか思えなかった。


「そうですか。期待はできませんが彼女が更正できるといいですね」


更正できるといい、と言ったミルナだがまったくそう思っていなかった。他の三人もそう思った。そんな風に思われるほどワカナは救いよう性格をしている。


「よし。後は俺達に任せてくれ。君達はこれから大変だろうしな」


「そうだったな。お二人さんよ、改めて婚約おめでとう! 結婚式楽しみにしてるぜ!」


「! ああ、ありがとう」


「ありがとうございます」


その後、四人で少し世間話してから、王子二人は王宮に戻った。




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