この二人の思いも知らずにワカナはあまりにも身勝手なことばかり口にする。まるで自分が世界の中心でいるかのように。

「そんじゃ、早速雇ってあげるからお菓子を用意しなさいね。それから、」

「ワカナお嬢様！　これ以上何も言わないで下さい！」

「はあ？　何でよ！　執事の分際で口答えするわけ！？　後でお母様に言いつけてやる！」

ウォッチはこれ以上は見ていられないと思ってワカナをなだめようとする。ソノーザ家を裏切ってはいるが執事としてのワカナの暴言を見過ごせなかったのだ。

「奥様に言いつけて構いませんが、このお方のお顔をよくご覧になってください！　この方は我が王国の第二王子殿下ですぞ！　無礼は許されぬお方なのです！」

「えっ、第二王子！？　あっ、本当だ！　貴族らしくない放蕩王子と呼ばれたレフトン王子だわ。何でここに！？」

「「「（こ、この女……！）」」」

ワカナはようやく気付いたが、本人の目の前で「放蕩王子」と口走ってしまった。更にこんなことも。

「な～んだ。王太子になれなかったハズレ王子じゃない。王族の男だから使用人にもできないじゃないの！　ガッカリ～」

「「「……！」」」

「お、お嬢様……」

「はあ……」

ワカナは相手が王族であるにもかかわらず無礼な態度を崩さなかった。レフトンが貴族らしくない口調と態度なのは確かだが仮にも王族。公爵令嬢とはいえ、こんな態度は普通許されるはずがない。

「（……令嬢に直接言われたのは初めてだな）」

「（こ、この女、自分こそ性格がハズレのくせに！）」

「（……教養がまるでない。幼子を相手にしていると考えたほうがいいかな……？）」

それが分かっていないのはこの場でワカナだけだ。そんなワカナをウォッチは嘆き、ミルナは冷めた目で睨み、エンジとライトは怒りと侮蔑が込みあがり、レフトンは本当に頭が痛くなるほど呆れ果てた。

「ふっ、放蕩だのハズレだの……そういう評価をする人もいることは分かってたが、直に言われるときついもんだな。厳しい評価をありがたくもらうぜ、ワカナ嬢（適当に言って離れよう。関わりたくねえ）」

「ええ、喜んで受け取りなさい馬鹿王子」

「……（この女に言われると腹立つなあ）」

笑ってワカナの評価を受け取ったレフトンだが、そんな態度が気に入らないのかワカナは偉そうに「馬鹿王子」とまで口にした。流石のレフトンも顔を引き攣らせる。その直後、遂にエンジとライトは我慢ができなくなった。

「貴様、レフトンは仮にも第二王子だぞ？　王族を相手にその態度は何だ」

「態度ぉ？　何言ってるの？　側近の貴方たちだってそこまで敬語何て使ってないじゃない？　私はダメなのはおかしいわよ」

「な、何！？」

エンジの怒りのこもった言葉すら馬鹿にするワカナ。そんなワカナに対してライトが無表情かつ淡々とした説明をする。

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