第59話 (42裏側).精神的疲労?

国王の自室、そこで国王夫妻が疲れた顔で休んでいた。体はともかく心の疲れが深い。


「「…………はぁ」」


二人の格好も仕事用の正装からかなり楽できる服に着替えていた。国王ジンノに関してはベッドに寝転んでいた。人目につかないので問題ないのだろうが、、数時間前の精神的疲労はなかなか癒えない。だが、しばらくしてから二人は椅子に座って茶を飲みながら話し合うことにした。会話の内容は先ほどの日記とサエナリアのことだ。


「ソノーザ公爵家の処遇は降格を考えていたが、あの日記の内容が真実だと証明されれば、もはや確実に取り潰したほうがいいな。ベーリュに関しては罪人として扱うほかない」


長年、他国と友好に接するようになって穏やかな時代が続いたウィンドウ王国。その平和を十数年前に出世欲に駆られて乱してきた元凶を知った国王は静かな怒りを燃やしていた。その気持ちは王妃であるエリザベスも同じだった。


「そうですね。あの家は、ベーリュ・ヴァン・ソノーザは恐ろしいことに手を出しすぎています。もう貴族にしておけません。でも、サエナリア嬢は……」


「ああ……」


サエナリアが生まれた家にこれほどの問題があると発覚してしまった以上、今のままでは彼女を王太子妃にし続けるのは難しい。そう考えると二人の気が重くなった。何しろサエナリア・ヴァン・ソノーザを王太子の婚約者に指名したのは国王の判断だ。その理由は二つある。


一つはソノーザ家が公爵家であるため、身分的には問題もなく後ろ楯として十分だったのだ。ソノーザ家の強引なやり方が気がかりだったが、もう一つの理由が後押しする結果になった。


もう一つの理由とは、サエナリアその人だった。近年、有能な人材に恵まれないウィンドウ王国でサエナリアの存在はかなり希少な存在だった。他の令嬢と比べて極めて有能な人物であり、礼儀正しく誠実な人柄だ。王太子の婚約者にふさわしい。欠点があるとしたら容姿が目立たない程度だが、それも他の有力貴族の令嬢と比べると少し地味だという程度の話だ。立場からして問題ないが、王太子になったカーズの方が問題だった。


「王太子の選抜を間違えてしまった………私たちのミスだ」


「そうですね。カーズが簡単に目移りするなんて、もともと女性に興味を持っていなかったのに………」


王太子をカーズに決めたのも国王と王妃だった。女性にあまり関心を持たなくて、サエナリアにも興味を示さなかったが、長男で成績に問題ないからと期待を込めて王太子に決めた。


その結果が婚約者の行方不明という事態になってしまったことに二人は胸を痛める。カーズの方に問題がある以上、親の教育に問題があることを示す。親としてどこで教育を間違えたのか思い悩んでしまう。


「サエナリア嬢が見つかれば私たちから誠心誠意謝罪せねばな」


「カーズの婚約者にしたばかりに、こんなことに………どう償えばいいのでしょうね………」


国王も王妃もサエナリアに同情的だった。カーズから聞いたこともあってか、ソノーザ家に強い悪感情を抱くもサエナリアは別として考えている。

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