第58話 (41裏側).暴露本?

国王と王妃は日記の内容について、全て目を通し、言葉を失った。ソノーザ家の現当主ベーリュ・ヴァン・ソノーザの裏の姿、それを彼の行方知らずの弟の日記から知ってしまった衝撃は大きい。日記に時々記された恐るべき事実に国王と王妃は息を飲んだ。そして、


「ここで途切れています。いかがですか、国王陛下」


「……なんということ、だろうか……」


それだけ言った後、日記を一度閉じた国王は俯いて、そのまま黙り込んでしまった。まるで日記から目を背けるように頭を抱えたくなる気分だっただろう。ただし、それは決して日記の内容が暴露本のようにしか見えなくて怪しいからではない。あまりにも衝撃的な事実が多く、それでいてかなり濃い内容であるために気持ちの整理が追いつかないのだ。


「(……悪い夢でも見ているのか……?)」


ソノーザ公爵には出世欲の強いところがあることは学生の頃から知っていた。何しろジンノが王太子だったころに途中から取り巻きになった男なのだ。その頃から、野心が強いくらい十分理解しているつもりだった。だが、過去にここまでの罪を犯していたとは思いもしなかったのだ。宰相のただならぬ様子から何か悪い予想をしてはいたが、予想をかなり上回っている。


「これ、全部、本当……?」


王妃も同じ気持ちでいた。その顔は目を見開いたまま困惑し手は震えている。自分たちが学生時代で青春を謳歌していた裏側で起こっていた様々な出来事を知ってしまい、どう反応すればいいか分からないのだ。何しろ、当時の自分たちの立場すらうまく利用されていたのだから。


沈黙の中、重い空気が流れる。驚愕、恐怖、疑念、悲しみ、怒り、後悔。国王夫妻の二人の頭の中は今、過去の事実に対する様々な感情が巡っているが、やがて国王は最終的に最初の目的を優先した。


「……この日記はカーズの馬鹿がソノーザ家の屋敷から持ってきたのだな?」


「はい、そのようです。どうも、サエナリア嬢の部屋にあったとおっしゃっていました」


宰相の言葉に国王は首を傾げた。日記が存在した場所がおかしいと感じたのだ。


「サエナリア嬢の部屋にだと? それは本当か?」


「ご本人がそおうおっしゃっています」


「そうか、ならばこの日記をもっと詳しく見直して、サエナリア嬢が向かう可能性のある場所をいくつか見出してくれ。今は彼女の捜索が最優先だ。今はな。だが、この日記から分かる範囲でのソノーザ家の罪状も記録しておくようにしてくれ。後で証拠を探し出すためにもな」


「かしこまりました。必ずやソノーザ家の罪を暴いて見せましょうぞ」


宰相は深々と頭を下げてからその場から去った。少しして、国王夫妻も謁見の間を後にした。

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