第38話 馬鹿者?
護衛二人は後ろで何を思っているのかはカーズには分からない。ただ、正面から見ればカーズから目を背けているのは明白だった。国王と王妃を彼らが気の毒で仕方がない。
「陛下! この私にご命令ください! サエナリアを探せと!」
サエナリアの捜索を命じてもらうように声を大きく発するカーズ。だが、国王と王妃の反応は彼の予想を裏切る結果になった。
「この馬鹿……」
「え?」
「こぉんの、馬っ鹿者がぁぁぁぁぁっ!」
「ええ!?」
国王は顔を真っ赤にして叫んだ。もちろん、カーズに対する怒りを込めて。カーズは驚きのあまり目を丸くして姿勢を崩した。
「お前は一体何を言っておるのだ! そんなことを言える立場だと思っているのか!?」
「な、何をおっしゃるのですか!? 言っている意味が、あっ! 私が黙って公爵家に向かったことを咎めているのですね!?」
「それだけではないわ! 最初から全部だ! 一々説明しないと分からんのか!?」
何が何だか分からないという顔でいるカーズに、王妃が呆れながら説明した。やつれた顔で額に手を当てて。
「カーズ、陛下の言葉の通りですよ。サエナリア嬢を蔑ろにして不貞を行ったこと、彼女を泣かして失踪する原因を作ったこと、貴方が言ったように勝手に公爵家に行ったこと、手掛かりだという理由で人の日記を持ち出したこと、全てです。これで分かりましたね」
「なっ!? それは、その………(しまった!)」
カーズは王妃に嫌みのように説明されて、嫌でも理解してしまった。王太子らしからぬ問題行動ばかり起こしていると言われたのだ。カーズとしては否定したくても否定できない。
だが、文句ばかり言われているカーズだが、一つ反論した。このままではサエナリアの捜索をさせてもらえない可能性がある。それだけは避けたかったのだ。
「か、勘違いが一つだけあります! 確かに私はサエナリアを理不尽に罵って泣かせてしまいましたが、そのことが原因で家出に繋がったわけではありません! あれは公爵家の、」
カーズは必死で反論と言い訳を始めるが、国王が途中で遮ってしまった。
「公爵家の家庭に問題があっというのはすでにお前から聞いた。聞いただけでかなり酷かったらしいが、それだけか? サエナリア嬢の心にとどめをさしたのはお前自身だと思わないか?」
「え? とどめとは?」
「その顔を見ると、そんなことも分からないようだな………」
戸惑うカーズの顔に、国王はため息を吐いた。話を進ませるために、王妃はかわいそうな人を見るような目でカーズを見ながらも補足始める。カーズのことを想像以上に頭が悪い子供と思えて仕方がないのだ。母親としてとてもつらく感じている。
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