第37話 謁見?
ここはウィンドウ王国の王宮、国王の私室。国王が書類仕事をしていた時だった。
「何、カーズが戻ってきたと?」
勝手に公爵家に向かったらしい息子が戻ってきたという知らせを聞いた国王は険しい顔になった。知らせを伝えに来た兵士が、国王に事実を全て話してくれたからだ。
「はい。何でも、陛下に大事な報告があるとのことです。ソノーザ公爵家の真実を暴いたとか」
嫌な予感がするが無視するわけにはいかない。国王は筆をおいて、すぐに行動に移した。
「謁見の間に来させろ。すぐに私も準備する」
「はっ!」
兵士が去った後、国王は深いため息をついた。
「はぁ……あやつに王太子を任せたのは失敗だったのだろうか?」
◇
謁見の間。
今は玉座に座る国王と隣に座る王妃の前で王子が跪いている。この三人の関係はもちろん親子だが、普段は公私をしっかりわきまえている。……しかし、今度の件はそれが上手くいかないかもしれない。
玉座に座る現国王ジンノ・フォン・ウィンドウは、息子にして第一王子のカーズ・フォン・ウィンドウが戻ってきたと聞いて、謁見の間に連れてこさせた。息子と同じ青紫色の髪と碧眼の壮年になる国王は、年齢よりも少し老けて見える。国王という重圧がよほど重く感じるのだろうか。決して息子のせいだとは本人も他の者も思いたくはないだろう。
「(いや、老けてきたのは、私の息子が面倒くさい男であることが原因の一つなのは否めんか)」
今回の件で白髪がまた増えそうだなと思った。ジンノはカーズの教育をどこで間違えたのか頭を悩ませる。妻にして王妃エリザベス・フォン・ウィンドウも同じく悩むが、金髪で赤い瞳の淑女も悩むたびに頭が痛くなっていた。
「(はぁ、どうしてこうなってしまったのかしら)」
国王と王妃。この二人は今、同じことで頭を悩ませている。それは目の前にいる愚息にして王太子のことでだ。自分たちに内緒でソノーザ公爵家に向かったと聞いて驚き、しばらくして戻ってきたかと思えば、婚約者が家出したから捜索願を出してくれというのだ。何があったのか聞いてみると、思った以上に面倒なことになっていたのだ。
「…………(ソノーザ公爵家で知ったことの全て)ということがあったのです。陛下、どうか一刻も早いサエナリアの捜索を!」
国王と王妃がカーズの話を要約するとこうなる。
一つ、カーズは王太子でありながらミーク男爵令嬢と積極的に関わるようになって、サエナリアを泣かしてしまった。
二つ、カーズは二人との関係修復を望んでソノーザ公爵家に謝罪に言ったら、サエナリアの家出を知った。
三つ、カーズはソノーザ公爵家の家庭でサエナリアが蔑ろにされていたことを知った。
四つ、カーズは王家の権力を使ってサエナリアの捜索を望んだ。
…………ということになる。
「「…………(はぁ~)」」
国の長として、知らなければならないことだが、息子の暴走が要因で知ることになるのが嫌だった。
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