第4話 一人だけ?
ネフーミはワカナの家族に対する関心の無さに絶望したのか膝から崩れ落ちた。
「そ、そんな……嘘よ、私のワカナが……こんな……」
一方、ベーリュはワカナの態度にもかなり怒りを感じたが、どうしても聞き捨てならない言葉を聞いて、疑いの眼差しを周囲に向けていた。自分の妻も例外ではない(というより元凶)。
「……サエナリアにはどうしていたんだ? 『何でも譲ってくれる』とはどういうことだ?」
「あ、あの子は……何も言ってこなかったの……だから……」
次女のワカナの態度がこれでは長女のサエナリアは……。そんな悪い予感を感じたベーリュはサエナリアの環境を知る必要があると判断した。
「ちっ。誰か長女の、サエナリアの部屋に案内しろ! ネフーミ、そこで説明してもらうぞ。娘たちにどんな子育てをしてきたのか! 専属の使用人も連れてこい! いいか、サエナリアの使用人だ。他の者たちはサエナリアがまだ屋敷にいないか隅々まで探せ!」
ベーリュは妻と使用人たちに向かって吐き捨てるように叫んだ。流石にワカナもビクッとひるんだが、父親が長女の部屋に去っていくと悪口を口にしていた。
「……何なの、あのうるさいおっさんは? 騒がしくてバカみたい」
「「「「「…………っ!?(うるさいおっさん!? 自分の父親じゃないか!)」」」」」
その時のワカナの顔を見てしまった使用人たちは、『ワカナお嬢様が悪女に見えた』と思った。
◇
「ここか」
長女のサエナリアの部屋の前にいるのは両親のベーリュとネフーミ、それからベーリュの側近の執事とサエナリアの専属の侍女の4人だけだった。
「……サエナリアの専属使用人はお前一人だけか。他の者はいないと?」
「はい。他の方々は奥様とワカナお嬢様の専属、もしくは他の雑務をこなすだけとなっております」
サエナリアの専属使用人は侍女一人だけだった。平凡でそばかすのある顔に眼鏡の少女だ。年齢はサエナリアと同い年くらいだろう。
「ワカナの専属の数は?」
「十人以上いると思われます」
「はあ?」
姉妹で専属使用人の数に差がある。ベーリュは隣の妻を睨む。
「ネフーミよ。最初は娘に7人ほど使用人をつけたはずだが、今は姉に一人、妹に十人以上。この差はあんまりではないか?」
夫に話を振られて、ネフーミは見るからに狼狽する。
「そ、そんなこと言っても、ワカナが『お姉さまの侍女を私に頂戴』とか『お姉さまの執事のほうが格好いいから私に付けて』って言うからで……」
「馬鹿かお前は! そんな理由で使用人に差をつけたというのか! そもそもあいつらは何だ!」
ベーリュは言っているのは、今の屋敷にいる使用人たちのことだ。特に執事だ。自分が雇った執事は一人もいないのに、その場にいた誰もが年若い美男子、つまりはイケメンばかりだったのだ。
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