第5話 この男粘着につき
哺乳瓶より先にガオガイガーの超合金握ってたこの俺に向かってこいつ言っちゃってくれたわおいおいおい。
こいつがロボット設定ではなくアンドロイドタイプを執拗に推していた理由は根底にロボットモノへの偏見があったからか!いや絶対そうだよ。
今わかった。相模原の言葉と態度の節々からロボジャンルへの見下しを無意識に感じていたからこそ俺は論争に負けたくなかったんだ。
「お、お前ロボットを……ロボットをバカにしやがったなおいオラァン! アンドロイドは良くてなんでロボがダメなんだよ!」
「だってしょうもないじゃん。合体ロボに限らず巨大ロボ系全般ベリーベリーしょうもないね。でっかくする意味がわからないし非合理的でしょ」
こいつにはロマンが通じないの?でっかいからすごいし合体するから尊いんじゃん!
「いや…でっかいのかっこいいし…合体するの…ときめくじゃん?」
「全く全然。いちいち巨大ロボ出さずにさっさとミサイルかなんかで敵やっつければいいんじゃない?」
「大抵の作品はそういう一般兵器が通じないって設定になってんだよ!」
俺は相模原に講義を始める。
「まず一般兵器くんが敵に猛攻撃をしかけて『やったか?』ってなってな・煙の中から無傷の敵が出てくる! なんてこった! じゃあ巨大ロボの出番だ! ってなるんだよ!」
「やったか? ねえ。なんだかリアルじゃないなあ」
「リアルっていうかそのそれは……」
相模原がうつむいた俺の顔を覗き込むように視線を合わせてくる。
「題材そのものがリアルじゃないんだよね。そういうわけでロボット系はちょっと……ねえ?」
は~! マジかこいつ! ロボットジャンルにここまで上から目線でイキってくるような女だったのかこいつ!
確かに相模原のツッコミは全てとは言わないが一定のロボジャンルについて回る疑問だ。
なぜそのロボットが必要なのか? その世界観にロボを落とし込む必然性がないと作品がとっちらかってしまう。
いわゆる『お前それただロボ出したいだけやんけ』って作品も確かに存在する。
だけどそれは極々一部の話だ。しっかりとロボットが出撃しなければいけない理由を説明している作品は星の数ほどある!
というか『お前それただロボ出したいだけやんけ』系アニメもいいじゃないか!
無理やりロボ出してもいいじゃねえか! ロボかっこいいんだから!
つまり相模原がこのジャンルの楽しみ方を知らないだけに過ぎないんだ!
楽しむことより疑問が先に頭に浮かんでしまっている時点でロボアニメを見る資格がねえ! まず楽しむ! それが礼儀ってもんだろが!
「よくもまあそこまでイキりあそばされますね相模原氏~!」
「町田氏こそ少女漫画にずいぶんイキりあそばされたてまつられてましたけど~?」
「ああ!?」
「おあ!?」
こればっかり譲れない。そんな思いから俺も相模原もだいぶヒートアップしていたらしく想像以上の大声を出してしまっていたらしい。
「お前ら声デカすぎだ!いいぞもっとやれ!」
突然横から煽りが差し込まれる。この声はあの人だ。ああ最悪だ。
相模原はバツの悪い表情を浮かべている。恐らく俺も同じような顔になっていることだろう。
「あ~……伊勢原先生僕そろそろ帰るところなんで。それじゃさような「おいおい町田に相模原! 先生もおしゃべりに混ぜてくれよなあ。ケヒヒ!」
俺と相模原の間にわざとらしく下卑た笑いを浮かべながら割り込んできたこの男は伊勢原 巽(いせはら たつみ) 体育と生活指導を担当している男性教師だ。
年は確か二十いくつだったか…
この人は三十代でも二十代でもどちらでもしっくりくるくらい顔つきから年齢が読み取れない。子供っぽく笑ってる時は若く。
眉間に皺を寄せて説教をしてくる時は年相応以上の威厳を感じさせる。
その時その時の感情で年齢が変わっている。そう思わせるような人だ。
恐らくこの人は五十代でもこんな感じの顔つきのままなのだろう。
生徒からの人気は男子女子ともに高い。裏表のない性格だからだろうか。
原付き二人乗りしていたやんちゃ生徒達を十数駅分全速力で追いかけてゲンコツをくれた話は余りにも有名だ。
そんな今どき面倒くさくて熱苦しい性格は逆に新鮮でウケるのか。
反抗期真っ盛りなヤンキー君やわがままな性格とわがままなボディをしているギャル達も伊勢原先生の言うことだけは真面目に聞いている。
卒業式でワンワン泣くヤンキーもいるくらいだ。
そんな人気ティーチャー伊勢原に俺はどうも苦手意識を持ってしまっている。
なぜかはわからないが、この伊勢原という男……事あるごとに俺に干渉してくるのだ。
体育の準備と片付けにはいつも俺を呼び出し手伝わせやがるし、
一人で弁当を食っているところを見られたら最後。隣に座られ食事が終わるまでずっと構われることになる。
どうして俺にはかわいい女の子じゃなくて男性体育教師がつきまとってくるんだろう?
「町田に相模原。お前らどうせいつもみたいに好きなシチュエーションにゃキャラクターの話で盛り上がってたんだろ?」
伊勢原先生が俺たちに絡みだす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます