第15話 暴風王女は反逆罪を1発殴ることで許すと言った事にされてしまいました
「判っていただければ良いのです」
クリスはあっさり泣き止んだ。
ジャンヌらはそのクリスを白い目で見ていた。
グリフィズの目にははっきりあざとすぎると浮かんでいた。
「でも、お判り頂いていない方もいらっしゃるようですわ」
周りを見てクリスが言った。
「判りました。私、自らの人徳の無さを感じました。責任を取って修道院に入ります」
「何言っているんだ。クリス。お前はエドの婚約者だろうが」
「だって、グリフィズやジャルカ様、お姉さまに嵌められて、兵士達におもちゃにされてしまったんですもの。仕方ありませんわ」
「何言っているんだ。未遂だろ」
「酷い。お姉さま。外にいたのに、グリフィズもジャルカ様も兵士達を止めてくれなかったんです」
「えっグリフイズには止めろと」
「いいえ、私が呼ぶまでは中にも入ってきませんでした。お二人共私がおもちゃにされたら良いと思っていらっしゃったのですわ」
「いや、クリス様そんな事はありませんぞ」
「そうです。止めようとしたらクリス様が」
「どのみち伯爵が処刑されたら私は修道院に入ります」
クリスは慌てるジャルカとグリフィズを無視して言う。
「いや、待て、クリス。そんな事を母上やミハイル卿が認めるわけ無いだろう」
ジャンヌが呆れて言った。
「何を言われるのですか。そんなの父にお三方に裏切られて傷物にされそうになったと正直に話せば終わりですわ」
クリスは言い切った。
「そらあ、確かに内務卿は激怒すると思うけど・・・」
ジャンヌが今いるのは軍であって内務卿は直接関係ない。
怒りの矛先は父や母に行くだろう。
内務卿が仕事をボイコットするかもしれないが、それで困るのは両親だ。
「父としては元々私の婚約は王家から無理やり頼まれたので、仕方がないと受けたものだと思うのです。
私も王妃様の淑女教育にはいい加減疲れてきましたし、今回は信頼していた皆様に嵌められましたし……………」
クリスの言葉にジャンヌの頭は珍しく超高速回転していた。これは絶対にまずいやつだ。
クリスは婚約破棄しても何も問題ないはずだ。容姿端麗、頭脳明晰、挙げ句には使用人にも優しいと評判のクリスとの婚約は、あまたある国内外の貴族や王族の若者からの婚約申込みを押しのけて無理やり王家が結んだはずだった。
それをジャンヌのせいで婚約破棄になんてなった日にはジャンヌが目も当てられぬことになるのは目に見えていた。下手したら王妃からの1年間の謹慎淑女教育という拷問にもあいかねない。
そもそも、何故ジャルカらはクリスなんて囮に使ったんだ。別に変装させてジャンヌを使っても良かったし、他の女魔導士にしても良かったはずだ。クリスを騙して囮にする必要なんてこれっぽっちもなかったはずだ。ジャンヌはジャルカを恨む気持ちしか無かった。
「判った。クリス。何も言うな。全てクリスの言うとおりにする」
ジャンヌは言い切った。所詮、伯爵の一人や二人の命なんてどうとでもなる。将来に禍根を残そうが何となろうが、責任は未来の王妃のクリスが取ってくれるはずだった。
ジャンヌがどれだけ怒られようが何されようが、クリスとの婚約破棄の方がジャンヌには被害甚大だし、王家にとっても最悪なことだ。
「えっ、本当ですか。お姉さま」
「私に二言はない」
ジャンヌは言い切った。しかし、言った後に後悔することになるのだが。
「判りました。
ではこうさせて頂きます」
クリスは全員を見渡した。
「英明なジャンヌ王女殿下はこうおっしゃられたのです。
『反逆は大罪である。しかし、それを未然に防げなかった王家の罪でもある。
1発殴らせろ。それで全てを許してやる』と」
「………………」
クリスの言葉に絶句するしか無いジャンヌらであった。
「ちょっと待て。そんなの絶対に許さる訳ないだろう!!!」
ジャルカしか聞くことの出来ないシャラザールの怒声が会場に響いていた。
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クリスを怒らせると反逆罪も消えてしまう??
次回は王宮です。並み居る家臣の前でジャンヌの主張が果たして通るのか
評価も宜しくお願いします!!
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