もう一人の幼なじみ

ハル

第1話 幼なじみ

「菜月(なづき)ちゃん」

「あっ!和佳菜(わかな)ちゃん」



私、上谷 菜月(うえたに なづき)。


当時、5歳。



今、声を掛けて来たのは


幼なじみ・三沢 和佳菜(みさわ わかな)。5歳。



私には、後2人の幼なじみがいる。



天上 友飛(てんじょう ゆうひ)。5歳。


森谷 麻沙斗(しんたに まさと)。5歳。




4人は、いつも一緒にいて、良く遊んでつるんでいた。


だけど、もう一人いるとか、いないとか ―――



正直定かではない。





「友飛君、落ちちゃうよー」と、和佳菜ちゃん



木を登っている友飛君の姿があった。




「ねえ、夕日が綺麗だよー」と、友飛君。

「ねえ、それギャグか何か?」と、私。

「え~っ、どうして~?僕が友飛って名前だから?」


「うん」


「違うよ~。ねえ、ねえ、みんなも来てみなよ~」



「私スカートだから無理だよ」と、私。


「誰も見ねーよ!」と、麻沙斗君。




そんな中、和佳菜ちゃんは木を登っている。



「和佳菜ちゃん、危ないよ」と、私。


「気を付けて登れば平気だよ。二人とも早くおいで」と、和佳菜ちゃん。



「ほら、行けよ!馬鹿、菜月っ!」と、麻沙斗君


「夕日、沈んじゃうよ」と、友飛君。



私は木を登っていく。


後に続いて登って来る麻沙斗君。


私達、4人は夕日を見つめる。




「アイツとも見たかったなぁ~、夕日」

と、麻沙斗。


「アイツって誰?」と、私。


「もう一人の幼なじみ」と、麻沙斗。


「えっ!?」


「智樹(ともき)って言って、家庭の事情で海外に引っ越した奴がいんの」


「そうだったんだ。いつか逢えると良いね」と、私。


「そうだな……」




海の向こうにある夕日。


きっと同じ夕日を見つめてる


そんな思いを胸に


そして私達の物語が始まる





それから数年の月日が流れ ――――9歳。小3




友飛も麻沙斗もサッカーや野球など友達と遊ぶ事に夢中て、4人で会う事は、そうなかった。




そして、



「行って来まーす」



春4月。


私達4人は中学を迎えた。




「ねえ、君」



私に声を掛ける男の子。



ドキッ



≪うわ…カッコイイ男の子…≫



「はい」


「君と同じ学校に、森谷 麻沙斗君っていない?」


「森谷…麻沙斗…。私の幼なじみ…」


「幼なじみ?じゃあ君は…菜月ちゃんか、もしくは和佳菜ちゃん?」


「私…菜月です」



≪幼なじみって聞いただけで私達の名前…≫



「菜月ちゃんの方かぁ~。可愛い♪」



ドキッ


「えっ?か、可愛い?」



さらっと言われた事のない言葉に赤くなる。



「凄いピュアな反応だね♪ あっ!俺、土野 智樹(つちや ともき)って言うんだけど」


「土野 智樹…?もしかして…もう一人の幼なじみの…?」


「うん。そう聞いているなら間違いないと思うよ。ところで、アイツん家知ってる?」


「麻沙斗ん家、知ってるよ」

「じゃあ、案内してくれる?」

「良いよ。急にどうしたの?海外にいるんだよね」


「うん。ちょっと訳あって帰って来た。一時帰国的な」


「そうなんだ」




私達は色々話をしつつ麻沙斗の家に行くのだった。



麻沙斗の家は、一流会社で共働きをしているけど、両親は、余り帰って来ない。


転勤が多いからだ。


職場専用のアパートで暮らしているらしく時々帰宅する程度。


その為、麻沙斗は一人で暮らしているのと変わりはしない。




ガチャ


ドアが開く。



「あっ!お帰り~、麻沙斗」と私。


「あっ!テメー、また勝手に!不法侵入で警察だ!」


「酷っ!だって、麻沙斗が部屋番教えたんじゃん!」

「そうだけど。来る時位、連絡しろよ!」

「ええ~、面倒~。あっ!麻沙斗、麻沙斗。智樹あげてるよ」


「はあぁっ!?智樹って…あの智樹?いやいや、アイツ海外じゃん!そっくりさんとかじゃねーだろうな」



「大丈夫だよ。だってきちんと名前教えてくれたし、私達が幼なじみって事も知ってたし」


「お前は、人を疑うという気持ちはないのか?」


「あるよ。あるけど、嘘ついてる様子じゃなかったし」



「麻沙斗~、菜月ちゃんいじめないの~可哀相だよ~」



ふわりと背後から抱きしめられた。


ドキッ



「…智樹…」

「うわっ!智樹が本当にマジでいたぁっ!お前は、何故いるっ!」



抱きしめられた体を離すと、私の頭をポンとする智樹。



ドキッ



「ちょっと訳あって~」

「訳?何だ?その訳って」

「ちょっとね~」


「それじゃ、私は帰るね。麻沙斗も帰って来たし」


「あっ!菜月ちゃん、一緒に夕飯しよう。3人分作ったから。麻沙斗、勝手にキッチン借りたよ。パスタだけど作らせて貰いました♪」



私達3人はテーブルを囲み夕飯にする。




「で?本題は?」

「相談事。個人的な話」

「なるほどな」


「うわぁ~♪ねえ、これ美味しいね♪」

「ありがとう♪」

「凄いね。麻沙斗も料理作ってたりしてるけど、男の子が料理作れるなんて良いよね♪」


「じゃあ、そういうお婿さん見付けなきゃね。菜月ちゃんなら、どっちのお嫁さんになりたい?」


「えっ!?私!?」


「な~んて。そんな顔しないの。菜月ちゃんピュアな反応するから面白いね」


「か、からかわないでよ」



食事を済ませ、私は洗い物をする。



「相談事って何だよ」

「恋愛」

「えっ?」

「失って気付くって事。俺、そんな事あっての後で、正直ヘコんでてさ…向こうにいたら辛いって思って…」



「ごめん、それじゃ私帰るね」

「あっ!おいっ!一人で…」

「あー、良いの、良いの。男子水入らずで話しなって。じゃあね」

「あっ!おいっ!菜月」



私は麻沙斗の家を後に帰って行く。




「菜月ちゃん可愛いね」

「えっ?」

「ピュアだし、何かぎゅうってしたくなるような感じ…二人は本当の幼なじみだね」

「何言ってんだよ。お前も幼なじみじゃん!」

「サンキュー」




そして、その帰りの途中 ――――




「菜月?」

「あっ!友飛だ」

「こんな時間に何してるの?」

「えっ?あー、麻沙斗ん家の帰りで」

「麻沙斗ん家?送ってくれなかったの?」


「違う、違う。智樹がいて」

「智樹?智樹って…確か…幼なじみの」

「うん」

「そうだったんだ」


「それに、私が送らなくて良いって言ったし、せっかくだから男の子同士の会話とかもあるだろうから」


「だからって危険だよ」


「麻沙斗に止まられたけど帰って来ちゃった」

「送るよ」

「大丈夫だよ」

「駄目だよ」



私は友飛に送ってもらった。




「ありがとう」

「いいえ。それじゃ」

「うん」



私達は別れた。






それから、一ヶ月が過ぎ ――――5月


その間、私達5人は一緒にいる時間を作った。


そして智樹は日本を発った。




「智樹、行っちゃったね」と、私。


「ああ、そうだな」と、麻沙斗。


「海外かぁ~、良いなぁ~」と、友飛。


「友飛、英語苦手じゃん!」と、和佳菜。


「え~、そんな事ないよ」と、友飛。




二人は騒ぐ。




≪良いなぁ~…和佳菜が羨ましい…≫



和佳菜は、元気で明るくて友達が多くて、ハッキリと自分の意見を言える女の子。


ありのまま出してる。



私とは正反対だ。


私はありのまま出せる人なんて、麻沙斗位だ。


他の幼なじみにはありのままは出せていないと思う。



私達は空港を後に帰った。





ある日の事。



「上谷」



同じクラスの男の子


世木元 和希(せきもと かずき)君が話し掛けて来た



「上谷、今、好きな奴とかいたりする?」

「えっ?いないよ。どうして?」

「じゃあ…良かったら付き合って欲しい」




ドキッ



「えっ!?」



生まれて初めての男の子からの告白された。



「私と?」

「そっ!」

「…えっと…」

「気になる人とかいたりする?」

「いないけど……可愛いとかじゃないし……辞めた方が……」

「ゆっくりで良いから」



私は迷ったあげく付き合ってみる事にした。





















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