明日はついに決勝戦

「しかしまさか、明日は俺とお前で決勝を戦うことになるとは思わなかったな」

学校が終わった後、中学生の男子が親友に呼び出されていた。秋の夜の、ほんのり冷たくなった風が2人の間を吹き抜けている。

「ああ、本当だよ。まさか明日決勝戦をすることになるとは思わなかったよ」

男子は今の素直な気持ちを親友に伝えた。


「明日の決勝戦、相手が親友の俺だからって手を抜くなよ。勿論俺も手を抜かねえからな」

「当たり前だろ。ていうかそもそもどうやって手を抜くんだよ」

男子は困惑の笑みを浮かべた。


「いや、お前のことだからさ、つい親友相手だと情が湧いて手を抜いてしまうんじゃないかって思ってよ。でも不要な心配だったようだな。明日は正々堂々戦おうじゃねえか」

「いや、お前さ……、やる気満々だからいつ指摘しようか悩んでたけど、この勝負おかしいと思わなかったのか?」

「おかしいって何がだよ? 親友同士の俺とお前が決勝で対戦するなんて、あまりにも話ができすぎてるってことか? 気持ちはわかるが今回の対決はグループを2つに分けて予選をしてそれぞれで勝ち上がった俺とお前が対戦するんだ。俺とお前がいかさまなんてするわけないし、正々堂々やった結果なんだからおかしいことなんて何もねえよ」


「いや、たしかにずるしたらすぐにばれるから正々堂々でしかやりようがねえよ。だけど、決勝戦が明日だなんてどう考えてもおかしいだろ」

「今日と明日の2連戦が不思議なのか? 別にどんな競技だって2連戦くらいあり得るだろ?」

「いや、お前さ、俺とお前が明日何の勝負するのか一度声に出して言ってみろよ……」


「何の勝負って、給食のデザートのプリンを賭けたジャンケン対決の決勝戦だろ? 今日は俺もお前も2つに分けたグループ内でジャンケンをして勝ち抜いたから明日決勝戦をやるんじゃねえか」

「なんで給食のデザートのジャンケンを予選と決勝で日付を変えて戦うことに疑問を持たねえんだよ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る