噛み癖

「幼稚園の頃、ついついブランケット噛んじゃってたんだよね……」

わたしは学校の帰り道、友達に苦笑しながら告げる。特に何の意味も無い雑談のつもりだった。

「めっちゃわかる! わたしなんてまだ噛んじゃってるもん! なんか美味しい味がするよね、あれ」

友達も恥ずかしそうに打ち明ける。自分だけじゃなかったという安心感と、なんなら友達に至ってはまだ嚙み癖がまだ直っていないみたいだ。わたしが仲間意識を共有出来て安心していると、友達が続ける。


「でもあんまり嚙み癖が酷かったらブランケット代がかさんじゃうよね。消化にも良くないし」

消化……? 予期せぬ単語が出てきて、思わず眉をひそめてしまう。

「それにひざ掛けに比べて1枚の量が大きいからあんまり食べ過ぎると太っちゃうし……」

なんだか予想外の方向に話が動き出しているので恐る恐る聞いてみた。


「えっと、ブランケットって、あの体に羽織ったりするあれだよね?」

「え、それ以外に何かあるの?」

友達は呆れたようにこちらを見てくる。多分これ以上の深追いはしない方が良いと思い、話題を昨日のドラマの話題という無難なものに大急ぎで切り替えた。彼女がブランケットを食べているということは聞かなかったことにしておいた。

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