1人暮らしの部屋で彼女と
「ただいまー」
「あら、おかえりなさい」
俺がワンルームのアパートに帰ると、彼女が声を出す。
「ご飯今から作るけど、どうする?」
「いや、コンビニで買ってきたからいいよ」
「あら、そう?」
玄関でのやり取りを終えて、部屋へと入る。相変わらず質素な部屋である。まさに男の1人暮らしの見本みたいな部屋だ。
「じゃあせめてビールだけでもつぐわ」
「ありがとう、お前は優しいな」
「あら、嫌だ。優しいに決まってるじゃないの? だって私、あなたのことはとてもよくわかってるんだから」
「そうか、それもそうだな」
「じゃあ、晩酌するわね」
そう言って彼女がビールを注ごうとする。
「あら、あららららららら」
だが、上手く掴めなかったのか、ビールがこぼれてしまう。ビールを持たせたのは今日が初めてだったがうまくいかなかったようだ。彼女に思わず普段よりも低い声を出させてしまう。
「やばっ濡れてんじゃん!」
途中からその声は俺が出したのか、彼女が出したのか分からなくなっていた。
「はぁ……。この腹話術人形高かったんだからビールで汚れたら困るんだよな」
裏声を出すのをやめてしまった今となっては、部屋の中にいるのは俺1人。あとは寂しさを紛らわせるために買った腹話術人形が置いてあるだけだ……。
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