その結婚待った!

今日はずっと片思いをしていた女性の結婚式の日だった。すでに恋は破れた相手だが、友人から今日が式の日であることを聞き、ついに式場まで足を運んでしまった。


我ながら未練がましいな、と式場の目の前に立ち苦笑する。


結局、結婚を止めさせに来てしまったのだ。


もちろんチャペルに飛び込んで止めたところで自分に靡くとは思えない。それでもせめて最後に一矢報いたかった。式の途中に飛び込んで最後にかっこよく散りたかった。


そんなことを考えながら僕はチャペルの扉を思いっきり開けた。突然入ってきた外からの光に式場の視線は僕に集まる。新郎新婦も僕の方を見ていた。


視線を一身に集め、僕は大きな声で叫ぶ。


「その結婚待った!」


新婦がどう答えるべきか悩みながら、僕に向けて口を開く。


「あ、あの……」


僕はフラれて式場を爽やかに後にする、そんなことを考えながら彼女のセリフを待つ。


「あの、あなた誰でしたっけ?……」


僕が唖然としているとなおも彼女は悩みながら、


「知り合いだったとは思うんだけどなぁ……。高校のクラスメイトとか……?」


となんとも煮え切らない言葉を小さな声で呟いている。


僕はただ困惑しながら片思いをしていた新婦を見つめた。


暫くすると式場のスタッフが半ば引きずるように僕をつまみ出す。


ズルズルと引きずられる僕は爽やかさとは対照的だっただろう。


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