5分差

「それじゃあ今から昨日の陸上競技大会の反省会を行うぞ」

集まった部員たちを前に、顧問の先生が話し出した。


「まず佐藤、お前はよく頑張った。1位を取った子との差は5分だが、マラソンで1位まで5分というのはよく頑張ったと思うぞ」

「ありがとうございます!」と佐藤は元気よく返事をした。


佐藤のことを話し終えて顧問の先生が次の子に移ろうとしたとき、野崎が横から口を挟んだ。

「先生、俺は日本記録まであと5分でしたよ」

「……野崎よ、たしかにお前は日本記録まであと5分だったな」

「そうですよ!俺も頑張ったでしょ!」

「ただな、お前の競技はなんだ?」

「400m走です!」

「……そうだよな。5分45秒で走ったお前が日本記録まであと5分で間違いはないがな……」

「徹夜でゲームして眠い中走った割には自分でもよく頑張ったと思いますよ!」

「そうだな。お前眠そうだったもんな。なんなら競技の途中で寝てたもんな。突然倒れたから脱水症状かと思って担架の用意もしたんだぞ……」


顧問の先生が頭を抱えていると今度は佐野が発言する。

「先生!私もあと5分でした!」

「……佐野、お前の競技はなんだ?」

「走り高跳です!」

「そうだよな……。もうタイムを争う競技ですらないよな……」

「あと5分早く起きてたら競技開始時間に間に合ってました!」

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