第二幕 月の明かりで踊ったよ!
21.いろいろあったけど
いろいろあったけど、やっぱり学校は、あたしの
最前列、真ん中の席に
学問の世界は理路整然として、
だけど、あれ? なんかおかしいな。
ばあちゃんの騒ぎから、ようやく気持ちも落ち着いた。落ち着いて周囲を見てみれば、なんだか教室の空気が違う。
空気って言うか、あたしを見る目が。
やっぱり、あたし自身を怪しげな目で見てるのか。
「おはよー、ユーちゃん。今日も、抱っこしたいくらい可愛いよー」
能天気な声と、やわらかい身体がのしかかってきた。有言実行じゃないか。
「イルマ……あんた、またなんか、やってくれたの?」
ふわふわの
「えー? 多分、私だけのせいじゃないよー」
「心当たり、出るの早いな」
深呼吸だ、あたし。
「この前、ユーちゃん
「呼んでないよ! 最初っから
「私、うきうきしちゃってー、友達にも話してたのよー」
「あたしにも言えよ! 当事者だよ! 聞いてたらその場で、断固拒否したよ!」
「次の日、私もユーちゃんも、学校休んじゃったじゃないー? みんな、すごく心配してくれてー、私、つい……」
「もういいよっ! 大体わかったよ! どうせ余計なこと言って、誤解を広げまくってくれたんでしょ! いつか絶対、仕返ししてやるからな! 覚えてろよっ!」
へらへら笑うイルマを、胸ぐら
誰だ、正義の味方か。見ると、
若葉色の制服に、銀の
「女が暴力を振るうな。見苦しい」
「……あたしからすれば、この手も充分、暴力っぽいんだけど。男なら良いわけ?」
「女を暴力から守る行為は、暴力に含まれない。男の、当然の責務だ」
なるほど、差別主義者なりの
「あー、ランラン先輩だー。おはようございますー」
「おかしな省略をするな! ランベルス=ラングハイムだ!」
んん?
今なんか、聞きたくない響きが聞こえたぞ。
思わず、まじまじとにらんだ。鼻で笑われた。
「下品で乱暴な小娘だな、ユーディット=ノンナートン。
叔父って誰だ。
ばあちゃんの直系なら大貴族だし、たくさんいるぞ。
「きっと侯爵さまのことだよー。ユーちゃん、他にまともな人づき合い、してないじゃないー」
ひどいこと言う。
大体、婚約を、目をかけているって表現するか? もったいぶっているのか、こんな短い会話なのに、いちいちわかりにくいな、こいつ。
「駄目ですよー、ランラン先輩。ユーちゃんは侯爵さまと私のものなんだから、いつまでも手を握ってたら、怒りますよー」
「しれっと自分を混ぜないでよ! もの呼ばわりも、だいぶ失礼だよ!」
「えー? 私、言われたーい。ユーちゃん、私のこと、ユーちゃんのものって言ってみてー」
「まっぴら御免だよ!」
あたし達のみにくい言い争いに、見ている方も、
一応、親戚で、本家の
ランランとやらは、わざとらしい
「俺は叔父上を尊敬している。叔父上は文武両道に優れ、
この
「身の程をわきまえて、
「それを決めるのは、あんたじゃないわ」
我ながら、そっけない声が出たものだ。
「悪いけど、今さら、あんたみたいなのがしゃしゃり出てきたって、ばあちゃんに比べたら役者不足もいいところだわ。聞くだけ聞いたから、授業に遅れない内に、自分の教室に戻りなさいな」
「な……っ」
「それから、あたしにとってなんの価値もないから、顔も名前も覚えないわよ。次に会ったら、また名乗ってね」
まったくもう。
授業の前に見直しておこうと思っていたところが、全然終わらなかった。イルマだけならともかく、今日は散々だよ。
相変わらず、髪にかかってくる
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