20.この形から始まったようなものだ
みんなが帰った後、倒れるように眠った。
昨日から
寝台で身体を起こすと、小さな明かりで、アルフレットが本を読んでいるのが見えた。
とても、懐かしいような光景だった。
ここに来たばかりの頃は、勉強していたり、すねていたり、緊張で疲れて寝ていたりした時に、決まっていつの間にか、アルフレットがこうしていてくれた。
あたし達は、この形から始まったようなものだ。
「少しは、楽になりましたか? ずいぶん張りつめていたようで、心配しましたよ」
「ありがとう……大丈夫だよ」
アルフレットが本を置いて、
優しい薄暗がりの中を、
こんな顔を見られたくないから、背中から抱きついた。銀髪の中に
「ありがとう、アルフレット……。アルフレットが、いてくれたから……今まで甘えさせてくれたから、あたし……がんばれたんだよ……」
こらえていた涙が、あふれ出た。足が震えて、手の力も入らなかった。
今さらだけど、いっぱい泣いた。
髪の毛も
「あたし、大丈夫だから……もう、いっぱい幸せだから。幸せの感じ方、ちゃんとわかったから……大丈夫だよ、アルフレット……」
少し怖かった。でも、言わなくちゃ。
「アルフレットが教えてくれたから、ずっと幸せでいられる。
なにを言ってるんだろう。
なにが言いたいんだろう。
頭から出てくることと、胸からこみ上げてくることが、全然違っていた。身体も、震えながらしがみついて、離れられそうになかった。
アルフレットが
そのまま、アルフレットの胸の中で抱きしめられた。三回目だ。しっかりと支えてくれて、口づけをした。
「お
「そんな……そんなこと、言わないでよ……あたし……」
「言いますよ。自分で言ったことを忘れるような困った人には、何度だって言います」
「え……?」
「私とあなたのことを、あなた一人で、勝手に決めないで下さい」
もう一度、口づけをした。
泣き顔も真正面から、
髪も寝ぐせだらけ、服も着っぱなしのよれよれだ。格好つけるもなにも、あったもんじゃない。
「以前、将来的には本人の意向次第、と言いましたが、
「これ以上もらったら……あたし、
「そんな理屈や、正体のない不安なんて放り捨てなさい。私もそうします。たった一つの大切なこと以外は、全部、後からゆっくりつけ足しましょう」
銀色の髪、青い目、浅黒い肌の色男、背が高く堂々として、物腰も
うん。
大切だよ。
それが大切なこと、で良いのかな。良いんだよね。
「小さくて、細くて、
また、口づけをした。
胸に抱いてくれたのと同じ、三回目だ。
あれ? 四回目だったかな?
まあ、いいや。それは大切なことじゃないよ。これから、何回だってするんだから。
アルフレットが言ってくれたから、ちゃんと言葉にしてくれたから、もう覚悟は決まったよ。二人一緒に、前に出よう。
ついでに、他の女の人と比べられても気にしない覚悟も決まっちゃったけど、こっちはもう少し胸にしまっておこう。
やっぱり、それはそれで、他にもそれなりの心の準備があるからね。うん。
あんまり長くは、かからないと思うけどね。
〜 第一幕 花も嵐も踏み越えるよ! 完 〜
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