第一幕 花も嵐も踏み越えるよ!
1.身を立てるだけの学問を修めたい
まずい、爆発する。
農機具用の、出力自体は大したことのない
多分、
庭に飛び出して、
こちとら、14歳の年齢からしても、だいぶ
腹立たしいにやけ顔が頭に浮かんだ瞬間、
「ア……アルフレット……どうして……」
「あなたの逃げ道の
朝も早い時間なのに、しっかりと品の良い上下を着て、白い
寝巻姿に、寝ぐせだらけの短い金髪をはね散らかしたこっちとは、
「ぶっ……あははははははっ! なんですか、その顔は? 猫ですか、黒ぶち模様の猫ですか? あははははははっ!」
機械油でも、べったりとついていたのだろう。おきれいな顔で、
もう、思わずかっとなって、
「
せいぜい、もがくしかできないあたしに、使用人達が暖かい目を向ける。なんだ、その顔は。
恥ずかしくて汗が出る。顔が赤いのが自分でもわかる。
こんちくしょう。
いつか絶対、仕返ししてやる。決めたからな。本気だからな。
**************
食堂に行けばなにか出してくれるだろうが、騒ぎの前にお菓子を盗み食いしていたので、面倒かけることもないかとあきらめた。
湯上がりに、二階の渡り廊下を下着姿でうろついていると、吹き抜けの玄関広間で、執事さんとお客がもめているのが見えた。
門前払いよりはいくらかまし、程度に、
きっちりと着飾った美人だ。胸も大きくて、柔らかそうだ。二階のあたしに気がついて、ちょっとすごい目でにらまれた。
あたし、なんかしたか?
したか。こんな小娘でも、朝っぱらから男の家を下着姿でうろついていれば、なんかしたと思われるわな。
早々に退散して部屋に戻ると、問題の張本人が
「勝手に入って申し訳ありません。朝食に姿が見えなかったので、ここで待たせてもらいました」
「あんたの屋敷でしょ。別に良いよ」
そう。ここはこの色男、アルフレート=クロイツェル侯爵さまのお屋敷で、このあたし、ユーディット=ノンナートンは、花嫁修業の
あたしの家は、大元の一族からは母方の分派でつながっている。父は学者で、あたしの遺伝はこっちの比率が高いと思う。
母方一族は
ばあちゃんは一族の、内というか裏というか、とにかく誰も頭の上がらない支配者で、分派の婦女子の一人一人にまで、
それで、まあ、とても外にはお出しできないと
相手のこんちくしょうにしてみても、28歳のいい大人が
改めて、のんきに座っている姿を見る。隣の
背が高く堂々として、物腰も
武門の人間なんて筋肉だけで生きてるのかと思いきや、学術書を読みくだいて説明してくれるほどの教養もある。
これで子守りに隠居させられるのは、確かに気の毒だった。
「あのさ。いくらばあちゃんの命令だからって、あたしのことなんて気にしなくて良いよ。学校に通わせてくれるだけで
父の影響で、勉強は得意だった。機械いじりは趣味だ。それなりに努力して、フェルネラント帝国高等学校にも飛び級した。
身を立てるだけの学問を
勉強さえできれば、その間の面倒さえ見てもらえれば、いずれ婚約なんて
かかった学費と生活費は、まあ、実家に請求してもらおう。それまでにばあちゃんが死んでいれば、完璧だ。
「なぜ、私が好き勝手をしていないと考えるのですか?」
きょとんとした顔を向けられた。
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