42高校生活、将来の夢
季節は春を迎えた。ヒナタは無事に二年生に進級することができた。そして、ミツキは編入試験無事に合格した。ヒナタとミツキは念願の一緒に同じ高校に通うという願いをかなえることができた。
ミツキが試験を受けたのは、入学式が終わり、五月を過ぎたあたりだった。当たり前だが、同じ高校に通うことはできたものの、ヒナタと同じ学年に編入することはできなかった。一年のブランクがあったため、ミツキはK学園の新入生として、この春からK学園に通うこととなった。
「まさか、ヒナタより一つ下の学年として一緒に通うことになるとは思わなかった。」
「そうだね。僕も驚いているよ。それでも、一緒にこうして同じ高校に通うことができたのはうれしいよ。」
双子は中学の時のように、昼休みに屋上に続く階段でお弁当を食べていた。しかし、中学の時とは違い、その場にいたのは、双子だけではなかった。
「相変わらず、お二人はラブラブなことで。」
「なんか、見ている僕までドキドキします。」
「くだらない。」
双子以外に三人の男子学生がその場でお弁当を食べていた。相沢と杉浦、なぜか入学式の日に代表であいさつした渡辺が一緒に居た。三人とも、二年生になっても同じクラスだった。渡辺とは接点がないと思っていたのだが、なぜかヒナタたちが双子だと知ってから、こうしてお昼を一緒に食べている。
双子は充実した毎日を過ごしていた。双子はお互いを似せることをやめた。自分の個性をそのままに、ありのままに生活することを心がけるようになった。
「俺達は今、最高に幸せだ。」
「僕も。」
二人は、こつんとお互いの額を合わせてつぶやいた。周りではワイワイとはやし立てる声が聞こえていたが、その声は双子にとって煩わしいものではなく、心地よいものとなっていた。
そして、あっという間に三年が過ぎた。ヒナタは高校三年生、ミツキは高校に二年生になった。ヒナタたち三年生は当然、進路の話題で持ち切りとなる。
ヒナタの声は高校三年生になっても戻ることはなかった。彰人にすすめられて精神病院にも通っているが、一向に良くなる気配はなかった。足の方は完治したが、声が戻っていないため、完全にあの日の火事での出来事を克服できていないのだろう。
双子は将来について、それぞれ考えていた。
「俺は心理学部に行って、ヒナタみたいなやつがもとの生活に戻れるように手助けしたい。それと、俺達みたいなやつの心を救っていけるようになりたい。」
ミツキは心理カウンセラーを目指すことにした。ヒナタの声はいまだに戻る気配を見せていない。自分が心理学を学ぶことで、少しでもヒナタの心の問題を解決したいという思いもあった。
「僕は、声が出るように努力して、彰人みたいな教師になりたい。」
ミツキが編入試験を終えて、高校に無事合格しても、彰人は双子の家庭教師を続けていた。双子の告白を受けても、気味悪がらずに、それまでと同じように接してくれる彰人に甘えて、高校三年生になった今でも、受験のために家庭教師をしてもらっていた。
ヒナタはそんな彰人にあこがれた。恋は実ることはなかったが、それでも彰人の自分たちの接し方は見習いたいと思った。ヒナタは教師を目指すことにした。
将来の夢も次第に見えてきた。ヒナタとミツキは自分の描いた未来に向かって羽ばたこうとしていた。
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