クーレターが終わり…
クーデターも終わり、1年程が経ちました。
ベルテンス王国は国名を変えることなく存続し、オルセア皇子が国王の座に就きました。そしてお嬢様はその妃として娶られ、今では王城での生活を送っています。
私はというと未だにお嬢様、もとい王妃様のメイドとしての生活を送っています。
今では、何事も無く生活出来ていますが、クーデターが終了した後にオルセア皇子が王座へ着いた後はそれなりに国内が荒れました。
国民の大多数は特別反応を示すことはありませんでしたが、グラハルト商国に侵略されている最中に逃げ出していた貴族たちが反発して来たのです。
まあ、そもそも重要な時に逃げていたような貴族にそんなことをする資格はありませんが、ああいった輩は自分のことを棚に上げて言いがかりをつけて来る生物です。はっきり言って見苦しいの一言でしかありませんが、それが理解できないからこそ、あんなことを言えるのでしょう。
それに対してオルセア新国王はそういう輩には一切目もくれず、クーデターの際に被害に合った王都の復興と居なくなった貴族の補填に力を入れていました。ただ、現在でも減ってしまった貴族の補填は進んでいません。むしろ、戻ってきた貴族から離反が出てしまっているので減っているくらいです。
王都については早々に済ませ、元通りに近い生活が戻っています。こちらに関しては建物以外の被害は少なかったので、復興自体はそこまで大変は無かったようです。まあ、クーデター中に家屋が壊れてしまった貴族に関しては、居なくなった貴族が使っていたうち、被害の受けなかった家屋を代わりに使っているようですけど。
現在ベルテンス王国は、倉の備蓄などがグラハルト商国の陰謀で殆ど無くなってしまっているため、他国からの支援を受けています。主に支援をしてくださっている国は、オルセア皇子の故郷でもあるアルファリム皇国ですが、他の国同様に無償というわけではないようですね。おそらく、ベルテンス王国にある鉱山から排出される鉱石の融通などを目当てに行っているのでしょう。
国としては無償よりも、しっかりと契約を通しての取引なら問題ないとの判断によるものらしいですが、私も無償で支援すると言われたら裏を疑いますからね。しっかり契約していた方が安心です。まあ、アルファリム皇国との契約は他国に比べて返す量が少ないようですけれど。
まあ、そんなこんなで1年程が過ぎたのですよ。
「クロエ。ちょっと良いかしら?」
「あ、はい。おじょ…王妃様」
ああ、またお嬢様と言いかけてしまいました。もう1年は経つというのに、まだ慣れませんね。
「これを国王に届けてもらいたいのです」
「はい、では他の者に届けさせま…」
「貴方が持って行って」
私は王妃様の近くに従事して何かと手伝うのが仕事なので。それでは職務を全うできません。なのに何故そのような指示を出されるのでしょうか。それに私が居なくなっている間はどのようにするおつもりなのでしょうか。
「え? いえ、ですが私は王妃様の筆頭の付きメイドですし」
「貴方が居ない間は他の者を近くに置きます」
「ですが」
「いいから行ってきてください」
「……はい」
半ば強引に指示されてしまいました。ですが何で私が持って行かなければならなかったのでしょう?
王妃様から書類を渡されます。中身を覗くべきではないのですけど、一番上にある書類の内容が目に入りました。これは、まさか…
「お嬢様、これは誰が、いつ作られた書類でしょうか」
「……そこは気にしなくともいいところですよ」
これは確実にこの書類を作成したのはお嬢様でしょう。しかし、私が見ている時に作っていた様子は見られませんでしたから、夜中に自室で作成したのでしょう。基本的に私は夜間などを除いて、常にお嬢様と一緒に行動していますから、その時くらいしか出来ないはずです。
「お嬢様、無理はしないで下さいと常々言っていますが、何故守ってくださらないのでしょう。お嬢様は今身重なのですよ!」
「そうね」
「そうね、ではありませんよ! 何かあったらどうするのですか!」
何で、このお嬢様は自分の体よりも仕事の方を優先しているのでしょう。ただでさえ妊娠するのが初めてですのに、もう少し安静にしていて欲しいものです。
「わかったわよ。それと、呼び方が戻っているわよ」
「あ、申し訳ありません。ですが」
「わかっているわよ。無理はしない。約束するから早く言って来て」
「…わかりました。行ってまいります」
「よろしくお願いします」
「はい」
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