第12話 話し合いは一旦終わり
王国に居る人たちを守る。それは
奴隷にはなりたくないからグラハルト商国の侵略を止めたいとは考えているけど、正直
と言うか、ミリアが第2王子との婚約を受け入れていたのだって王国のためになるからだし、第2王子に対して恋愛感情は大して持っていないのよね。婚約破棄されて落ち込んでいた理由だって、弱っている時の追い打ちと言う面もあるけど、いままで自分に1番懐いていた飼い犬が、いきなり自分以上に他の人に対して甘えていることに衝撃を受けたとかそんな感じだったし。
うん。あのゲームの主人公も変だと思っていたけど、
「そう…ですか。ええ、理解しました」
私の下手な説明でもオルセア皇子はしっかりと理解出来たようだ。あれでも、あまりいい顔はしていないようだけど、どうしてかしら?
「ですが、もしこのまま我が国のベルテンス王国への侵略計画に協力し、成功した場合に貴方は売国奴として罵られる可能性があることを理解していますか?」
ああ、だからあまりいい顔をしていなかったのね。まあ、確かに他国からの侵略に協力しているのだからそう言われても否定することは出来ないものね。
でも、
それに最初は夢だと思ったから勝手に動いたけど、
「十分に理解しています。それでも私が優先すべきことは国の民を守ることなのだから」
「わかりました。我々はそちらの協力を受け入れましょう」
良かった。とりあえず提案は受け入れてもらうことが出来たわ。これで大きく前に進んだことになるはず…よね?
「この後に細かい調整や話し合いが必要だと思いますが、もう周りが暗くなってしまっている時間です。この話は一旦切り上げて、また明日ここで話の細部を詰めていきましょう」
「そうですね」
オルセア皇子がそう言って話を切り終えた。確かに兵舎の窓から外を見る限りもう周囲は真っ暗になっている。それに、1日馬車に乗っていたからその疲れが出て来て、体が少しだるい感じもあるから続きを明日に回してもらったのは有り難かった。
話も区切りがついたし、宿に戻って夕飯食べて直ぐに寝よう。そう思って退出する前にオルセア皇子に会釈しようと視線を戻すと、皇子はさっきまで居た位置とは違い私の目の前1メートル程の位置まで近づいて来ていた。
「うぇっ!?」
意識を逸らしている間に凄く近くまで来るとは思っていなかったので、驚きで体が一瞬震えて声を上げてしまった。さすがに皇子相手にこれは拙いと思ったけど、どうすればいいのかわからず皇子の顔を見つめた。
「え、ああ、すまない。別のことに意識を向けていたようだけど、まさかここまで驚くとは思っていなかった」
「あ、いえ、私の方こそ驚いてしまって申し訳ありません。あ、あの、何か御用…でしょうか?」
ここまで近づいてくるという事は何かしら用があると言う事なのだと思うけど、何だろう? 皇子の方から話を切り上げたから、計画云々の話ではないと思うけど。
うーん、でも近くで見ると本当に美形ね。身長は180くらい? 確かミリアが160くらいのはずだから、それくらいかしらね。
ふむ。整った顔に金色の髪、翠色の瞳で身長も高め。うん。The 皇子って感じね。まあ少し優しめの顔立ちだから王族と言うか皇族としての威圧感はあまりないけど、その代わりずっと見ていられる顔だわ。
「聞いて良いか悩んだのだけど、嫌なら答えなくても良い。レフォンザム公爵の令嬢と言えばベルテンス王国第2王子の婚約者だったと記憶しているのだけど、そのような立場でこちらに協力するのは大丈夫なのかい?」
あー、なるほど。隣国の皇子だから王国の王族に関する情報も持っているのね。逆の情報は全く無い訳なのだけど、密偵や何かで情報を得たという事かしら。
と言うかお父様が渡した文には何が書かれていたの? ここに来た経緯とかが書かれていると思っていたのだけど、もしかして、ただの紹介状とかそんな感じの内容しか書かれていなかったのかしら。割と重要な部分だと思うのだけど。それとも私に直接関わることだから、自分から言いなさいと暗に言われているのかしら?
「ああ、それなら問題ありませんわ。グレテリウス王子から数日前の夜会で直接婚約破棄の話をされましたから。なので、今の私は王政とは無関係なのです」
私が婚約破棄されたときっぱり言うと、オルセア皇子は理解できないと言った表情をした。
「え? いや、王族の婚約は王の名で取り決められるはずだ。そう簡単に破棄できるわけがない」
「本来ならそうなのでしょうけど、それが出来てしまうのが今のベルテンス王国の現状なのです」
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