エピローグ
特別の意味
渦中にあっても
お弁当箱を横に置いた
見出しはこうだ。
『飯開先生の真実
「いいんですか、これ」
「ああ、オレの名前より
「そういうんじゃなくて。せっかく土下座までしたのに」
「残念だがなあ
「さすが
記事は実状とは違う視点から書かれていた。飯開が女生徒に手をだしていた部分についてはぼやかされ、とにかく
文字通り駆けずり回った
昼休みなのに
ほんの
「先輩が同性愛を認める人とは思いませんでした。非生産的だーとか思ってる側かと」
なんとなくのイメージで言ってみる。すると
「はあ? なに言ってんだお前。好きなものを好きと言える世間のほうが、生産性上がるに決まってんだろお
コンと頭を小突かれる。その暖かな感触に、
「好きなものは好きと……。そうですね。──わたし、先輩のこと嫌いみたいです」
「…………は?」
意を決して最近思っていたことを伝えると、
「今まで“みんな好き”と“なんか苦手”はあっても嫌いって気持ちは知りませんでした。とめき先輩といると楽だけど、ざわざわするし、モヤモヤする。今までこんな気持ちになったことないんです。これは、好きとも苦手とも違う。だから」
何日もかけてやっと出した仮説。これが今の自分の精一杯だ。
「わたし、とめき先輩のことがたぶん特別嫌いなんですよ」
「なんでええ??」
景気づけに紐を引く。破裂音にびっくりして目を見開く少年に、一番かわいい笑顔で告げた。
「そういうことで、これからもよろしくお願いしますね、とめき先輩」
だってこのクズ男は誰の初恋でもない。
はずなのだから。
◇ ◆ ◇
「──という
部活へ向かう前、教室に一人残った
「そんなに言うなら、ご自身で直接訊けばいいのに。仕事の合間にでも様子見に来たり」
やりとりはやけに楽し気な様子だった。電話の向こうから届く心配の声に、
「はい、だから大丈夫ですよおとうさん」
窓の外へ目を向ける。そこには、鈍重な灰色の雲が空一面を覆っていた。
「とめきせんぱ──……とめき君は、ちゃんと
◆ ◇ ◆
──お前はただあの家を破滅させる毒であればいい。
身内から浴びせられたそんな言葉が、いまだに人生を縛ってやまない。
──お前は毒だ。葛和を壊滅させる、埋伏の毒なのだ。
だから待つ。その時を待つ。
この偽証と罪咎にまみれた身を現さねばならない、裏切りの時を。
初恋トレッドミル(仮説) フィニッシュ
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