第78話

 一体どこにそれほどの話題が詰まっているのかというくらい、朝美と彩の談笑は尽きることがなかった。

 聞くところによると、二人は二十歳の同窓会以来、会っていなかったという。そりゃあ、話すことがたくさんあるわけだ。数十年ぶりの再会だもんな。

 でも、そろそろ夕飯にしてほしい。お腹が空いてきた。


「お母さん、そろそろご飯作ってくれませんか?」

「え、もうそんな時間!?」

「そうだよ。どんだけ話してるんだよ」

「ごめんね~。彩と話すのが楽しすぎて~」

「私が作りましょうか?」

 

 俺と朝美のやりとりを聞いていた陽彩がそう言った。


「え、陽彩ちゃんが作ってくれるの?」

「そうね。陽彩が作りなさい。私たちは楽しく話してるから」

「分かったよ。お母さんたちはお話してて、顔にまだ話したりないって書いてあるから。朝美さん、材料はありますか?」

「あるよ~。というか今日は年越しそばを食べる予定だったから、そばを茹でて具材を入れるだけかな。もちろん、陽彩ちゃんたちの分もあるからね~」

「分かりました、じゃあキッチンを借りますね」

「どうぞ。陽彩ちゃんありがと」

「いえいえ。二人は満足するまで話しててください」

「陽彩ありがと」

「んっ」

 

 夕飯を作ることになった陽彩はキッチンへと向かって行った。


「ほんといい子ね。陽彩ちゃん」

「でしょ。私の自慢の娘なの」

「いつも助かってるわ」

「雇ってくれてありがとね。ここで働きだしてからあの子今まで以上に楽しそうにしてる」

「それはここで働いてるというより、翼と出会ったからじゃない?」

「それもあるかもね」


 二人が俺に熱い視線を浴びせてくる。

 もしかして、俺、今ものすごく恥ずかしいことを聞かされてる?

 今すぐこの場から逃げよう。そう思って、俺は立ち上がると陽彩がいるキッチンへ向かった。


「あーあ。行っちゃった」

「まあ、いいじゃない。あっちも二人っきりにさせてあげましょう」

「そうね。私たちは、私たちで楽しみましょう!」


 キッチンに入ると陽彩が年越しそばに入れるための具材を切っているところだった。今はねぎを切っていた。


「あれ、翼どうしたの?」

「向こうにいるのが気恥ずかしくてな」

「どうしたの?」


 さっきの二人のやり取りを陽彩に伝えるとおかしそうに笑った。


「それは、恥ずかしいね。私が向こうにいたら同じようにするかも」

「だろ。何か手伝えることあるか?」

「翼、包丁扱える?」

「どうだろうな、自信はない」

「ないんだ」

「料理しないからな」


 それに比べ、陽彩は俺と話しながらもここちのいいリズムねねぎを刻んでいた。それだけでも、料理を普段からしているんだということが分かる。

 

「陽彩は料理するんだったな」

「まあね。お姉ちゃんと交代で作ってるよ」

「偉いな」

「お母さんが仕事で忙しいからね」

「そっか」

「そのうち翼も食べるようになるんだから、楽しみにしててね」

「そうだな。楽しみにしてるよ」


 結局、キッチンにいても俺にできることは何もなかったので後にした。

 とはいえ、二人のもとに戻るのもな。とりあえず、自分の部屋で待つとするか。そういえば、蓮夜は何をしているのだろうか。

 

 


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