第66話 【選択のモンブラン】

 文化祭も終わり、生徒たちはすっかりと受験モードになっていた。

 俺には関係なかったが、陽彩は受験勉強を頑張っているようだった。週五日だった『蓮』のバイトも今は週三日になっていた。


「受験勉強は順調か?」

「順調だよ」

「まあ、陽彩ならどこの大学にでも入れるだろうな」

「それは、無理だよ。さすがに……。でも、入りたいと思ってる大学にはなんとか入れそうかな」


 俺はそれなら安心だと頷いた。

 自分の入りたい大学に入ることができるなら、それでいいのだろうと俺は思った。陽彩は俺と同じくらい頭がいいからな。おそらく大丈夫だろう。

 俺は、休憩中の陽彩にコーヒーを淹れてやった。


「ありがと」

「バイトも遠慮せずに休んでくれていいからな」

「うん。ありがと」

「それで、結局何学部に行くんだ?」

「経営学部かな」

「それは、なんで?」

「だって、翼にはスイーツづくりに専念してもらいたいんだもん」

 

 つまり、それは俺とお店を一緒に開業するときに陽彩が管理をしてくれるってことか?

 それは、ありがたいな。現に『蓮』も朝美が管理をしている。お店を管理してくれる人がいれば、俺はスイーツ作りに専念ができる。


「それは、どうも……」

「だから、翼も早くお店を作ってね!」

「ああ、頑張るよ」

「それに安心して、遠距離にはならないから」

 

 どうやら陽彩が通う大学は県内にあるところらしい。

 それは、よかった。俺が通う大学も県内にあるからな。


「それは安心だ」

「ちなみに大学に入ったら一人暮らしを始めようと思ってるんだ」

「奇遇だな。俺も一人暮らしを始めようと思ってたところだぞ」

「そうなんだ! じゃあ……」


 陽彩は何かを言いかけてやめた。

 何を言おうとしたのだろうか、聞きたかったが、ちょうど朝美がホールに戻ってきて、午後の営業が開始することなった。


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